タナトスが呼んでる。遠く。-1
広樹達が住む街で一番高いビルの屋上。
黒衣の使徒が大鎌を携えて街の灯りを見渡していた。
「近い。 感じる。 プロト100」
デスは跳躍すると闇に溶けた。
私達が校門に戻ってくると、静かな影が佇んでいた。
「何で西野城さんがここに?」
西野城さんは微笑を浮かべたままこちらにゆっくりと向き直った。
「私もお手伝いいたそうと思って。 これでも戦闘向きの能力を保持している身ですから」
西野城さんはかわらず微笑を維持している。
「二人より三人で事に当たるのが効率の良い方法だ。 な、緑」
(君た ザッ そんな所で っ場合ではない)
ノイズ混じりの声が意識に割り込んでくる。
(デスが ザッ る。早く。 校庭をザッ)
「白鳥。 聞こえにくいぞ!」
(しかた のだ。 時間が経ちすぎ ザッ 距離 おいしな。)
「会長はたぶんデスが来るから早くしろ。っとおっしゃりたいのでは?」
(そ だ。 好野 ザッ 校庭にフィールドを張 る。)
相変わらず聞き取りにくい。が広樹さんは校庭でデスと戦うらしい。
「わかったわ。私は校庭の西側と南側を。 凪ちゃんは北側。 西野城さんは東側を」
二人は頷くとそれぞれの方向へと走って行った。
〜広樹目線に戻ります〜
校庭のど真ん中。半径100メートルには砂埃が舞うだけの無機質な空間があり。東側には校舎が立ち並び、北側には夕方の木が悲しげに枝の葉を揺らしていた。
南側には部室棟があり、西側は住宅街になっている。
情景描写も終わったし、俺はふと気付いた点があるので声に出して言ってみる。
「こんな所に陣取らなければよかった」
デスは俺を狙って来ているのだとすれば、もっと廃墟とか。なんせもっと人がいなくて器物破損しても誰も迷惑だと思わないところに陣取れば被害が少なかったのではないかと思っていた。
(好野、西ザッ君達が につい ザッ ぞ)
やたらノイズ混じりの声が割り込んでくる。
(デスが 来て ザッる。 用意は出来ているか?)
「ああ、オーラティックフィールドの準備をしておいた」
不意に生暖かい風が頬をなでた。
俺の目の前に竜巻の様に風が集まり、黒ずくめの死に神が姿を現した。
「我、世界の代弁者なり。 プロト100。見つけた」
図太い低い声。死に神というよりは、アメリカのレスラーみたいな声。
デスは飛びかかってくるでなく、間合いを開けてデスサイズを両手で持っている。
「一つだけ聞きたい。 プロト100について何を知っている」
校庭を覆うように多面体のドームの様なフィールドが張られていく。
空の色が闇から淡い赤色に変わる。
「プロト100。世界を揺るがす力。悪の根源。抹殺すべき対象」
こいつもハズレか。俺の知りたい情報じゃない。
デスはデスサイズを振りかぶる。
「世界のために 死ねぇぇ!!」
デスが地面を蹴った。
〜続く〜