蓮の決意-6
「へぇーそんな事が。」
「はいっ!」
翌日私は放課後いつものドーナツ店で柊先輩と昨日の帰り道の話をした。
「良い人だね、見ず知らずの貴女の為にそこまでしてくれるなんて。」
「えぇ!あの時は雨も降ってて気分も落ち込んでたから、本当に。」
「ゴメンね、それなのに先に帰っちゃって、落ち込んでたの分かってたのに。」
「いいんです!お陰であんな良い出会いが出来たんですから。」
珈琲を口にしカップを置き、私の目の輝きを察し。
「…出会いってまさか。」
「私、…もう一度会いたいですその人に。」
私が念願の恋をした事にようやくか…と言わんばかりに目をパッ開き笑みを浮かべ。
「そっかぁー茜ちゃんもついに、私も何だか嬉しいなぁー。」
「先輩…。」
「頑張って、私…その人ととの縁が結ばれるように全力で応援する。」
私はこの時知る由もなかった。
結ばれるように応援する。
その言葉が私たちにとって皮肉な運命の悪戯となる劇と化す事を。
「で?どんな人どんな人!」
「先輩落ち着いて、さっきも言ったように背は低くて茶髪の子です。」
「へぇー今どきの男子って背の低い子多いから、それでそれで!?」
「はい、あーこれ一番重要でしたね、私たちと同じ制服を着てました。」
「おっ、じゃー同じ学校の、で?学年は?部活は?」
さっきからグイグイと責める彼女。
「学年はどうやら先輩と同じ三年で、どうやら美術部に所属しているようで。」
「三年……、美術部。」
それを聞いた途端先ほどまでの勢いが消え。
「まさか、ね。」
「?先輩、どうかしましたか?」
ボソッと小声で呟く彼女、けど。
「えっ…あー何でも!それで、他には?」
「でもその彼、どうやら彼女が居るらしんですよ。」
「……彼女。」
「はい、やだ私ったら出会いだのもう一度会いたいだの言っておきながら、これじゃー浮気ですかね、いや良いんです!私はただもう一度会いたい、会って今度はちゃんときちんとお礼が言いたいだけですし。」
と、無邪気にその彼を話す私に相反しそれを聞いている先輩の顔がどんどん青ざめていき
「先輩?…どうしました、さっきから顔色悪いですよ?体調でも。」
「それでっ!?その彼の恋人について何て言ってた?」
「え…。」
私の言葉を遮り、少し焦ったように今度は睨みつけるようにその質問をぶつける。
え、どうしたって言うの?先輩。
「あの、先輩…何を。」
「あっあぁーゴメン…で、それで…その。」
ハッと我に返り我に返る彼女。
「…とても大事な人だって、多少抜けてる所はあるけど自分が辛いときいつも傍にいて支えてくれるとか。」
「……。」
顔が完全に沈みだし、目線はひたすらテーブルに向き。
「…どう、して。」
「先輩?」
「こんな、事って……私はまた同じ過ちを…稲葉、さん。」
稲葉さん?一体何の話。
「茜ちゃん…。」
「何です、怖い顔して。」
「浮気何て駄目、もう一度あってお礼がしたいだけ…その言葉に二言はない?」
「ホントどうしたんです。」
「いいから答えて!」
「っ!!」
瞬き一つせず鋭い目で私を見つめ。
「……え、えぇー勿論ですよ。私だってそこまでは。」
「…。」
「先輩、ホントどうしたんです!?やっぱ気分が優れないんじゃ。」
そんな私の問いに答える事なく彼女は自分のケータイを取り出し、そして。
「見て。」
と、短い言葉でケータイで撮った写真を私に突きつける。
「一体何を…。」
何が何だか分からずだるそうにその画面に目をやると。
「え…。」
そこには目を疑うような光景があった。