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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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蓮の決意-5

「へぇー吹奏楽部にね。」
「はい、と言ってもまだまだですよ、今日もミスばっかりで。」
「それは、キツイね僕もたまにあるからさ。」

私と同じ制服を着た男子にしてはやや背の低い男の子、きっと同じ学校ね。

「何部?」
「美術部だよ、この前もコンクールがあってさ。」
「絵を描いててもミスってするんですか?」
「そりゃするよどんな事でも行動に移せば必ずミスはあるし、いちいち落ち込んではいられないよ。」
「ふふそうですね、私も失敗して自信を失っても大丈夫なんですよね普段は。」
「と言うと?」
「良い先輩が居るんです、ドジで臆病なこんな私を気に入ってくれて、悩みとか聞いてくれたりこの前も演奏聴いて貰ったりして。」
「……。」

暖かい目で私を見る彼。

「それにねこの前も部活帰りにカフェに寄ったんですよ!?ドーナツ店に。」
「ふふっ♪」
「なっ、何です急に。」
「あーいやごめんごめん、ただ君のその良い先輩を語る顔があまりにも熱心というかとても輝いていて、思わず。」
「!こ、こちらこそ初対面の人相手に自分の事ばっか。」

同じ学校の人って事意外何も知らないのにまるで親しい友人のように肩を並べ楽しく談笑している。

はにかむ彼の可愛いらしい笑顔、きっと彼の人柄ゆえになせる技でしょう。

「君こそ誰か居ないんです?…その憧れの先輩とか。」
「んー先輩というか僕もう三年なんだけどね。」
「えっ!」

あまりにあどけない風貌だから同じ学年かと。

「しっ、失礼しました、私はてっきり…。」
「あっはは良いよ良いよ、よく皆に言われるから、彼女からも。」
「え、彼女って…へぇー恋人居るんだ。」

良いなぁー、まぁこんな人なら彼を好きになる人は当然いるよね。

「少々抜けてるところはあるけど、いつも僕の事を想ってくれて、僕が部活で落ち込んでる時や僕、母子家庭だけどそこで色々あって苦しかった時も当然のように傍にいて励ましてくれたり時には背中を押してくれたりして。」
「……。」
「僕にとって彼女は太陽であり、人生において絶対なくてはならない大事な存在なんだ本当にね。」
「君…。」
「……って今度は僕が熱く語り過ぎちゃったかな、あはは♪」

そうとうその人の事が好きなんだな、その口調や表情ですぐに見て分かる。

いいなぁーその人、こんな可愛くて純粋で優しい人のそこまで思われて。

ぐぅぅぅぅ

「っ!」

やだ、こんな時にまたお腹が鳴る何て。

顔を真っ赤に染め、無意味にお腹を両手で抑えるも。

「君…。」
「ごめん!何でもないからっ!」

もう、消えてなくなりたい、でも雨はまだ。

「はい!」
「え…。」

すると彼はそんな私をバカにするでもなくバックから取り出したドーナツを手渡す。

「良かったらどーぞ♪」
「え、でもそんな悪いよ!」
「大丈夫大丈夫!余って丁度困ってた所だったから。」

そう親切に言ってくれる彼の好意に甘えて、腕を伸ばしそれを口にする。

「……あぁー美味しい。」

やっぱ空腹時のスイーツは格別ね。

「良かった。」

ニコッと笑う彼。

すると私は溶け出すようにどんどん彼に惹かれていきこんな話も。

「実は私転校生なんです。」
「転校生?」
「はい、中学を卒業してそれからてっきりそのまま地元の高校…そう思ったのにまさかのお父さんの仕事の都合で引っ越して。」
「……。」
「それからはあまりうまく友達も出来ず、教室ではポツンといつも独りぼっち、…だから部活でも最初はそうだったけど。」
「その先輩に声を掛けられて。」
「はい!それからは勇気も出てきて、友達も出来るようになって今はとても充実しているんです。」
「そっかー。」

遠くでも見るように私の充実さに喜びを露わにする彼、初対面なのに。

「同じだな。」
「え?」

ボソッと独り言をたれる彼。

「あーいや何でも!」
「そうですか。」

などと楽しく話しているうちに家の近くまであっと言う間に着き。

「あっ、もう着く。」

気が付けば雨も止んでいた。

「良かった、じゃー僕はこれで。」

家の近くまで、と言っておきながらほとんど私の為に送ってくれた状態で。

「態々すみませんあー君に余計な道草くわしちゃったな。」
「ううん!僕の家もほんと近くだし、退屈しのぎに会話が出来て良かったよ、楽しかった。」

爽やかな顔でそう返答する彼。

それから私に手を振ってくれてそのまま歩いた道とは反対方向へ向かって歩いていった

「私の、為に…。」

沈んだ心が彼のお陰で晴れ晴れとした。

何て素敵な人、もう一度会いたい…必ず。



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