04.亀裂-2
不意に亜弓は俺の背中に腕を回し、はあはあと息を弾ませながら言った。
「嶺士、後ろから……」
「え?」
俺から一度身を離した亜弓はベッドの上で四つん這いになった。そして背を大きく反らせて尻を突き出した。
「入れて、嶺士、お願い」
もう幾度となく亜弓とのsexを経験した俺だったが、彼女にバックから挿入するのは初めてだった。俺自身はやってみたいとずっと思っていたが、亜弓が抵抗するのが怖くて今まで実現させたことはなかったのだ。しかしそれも智志に先を越された。昨夜目にしたヤツと亜弓との激しい繋がり合いが目に浮かび、俺の闘争心を否が応でも煽り立てた。
俺はごくりと唾を飲み込み、亜弓の腰を両手で鷲づかみにして、自分の持ち物をその秘部に押しつけた。
それはすぐには中に入っていかなかった。勝手が違っていて挿れるべき場所がわからなかったのだ。悔しさに胸が爆発しそうだった。それを察知した亜弓は焦ったように手を股間に伸ばし、俺のものを握ると自分の秘裂に導いた。「ここ……」
そして俺のモノは亜弓の身体にぬるりと深く入り込んだ。
亜弓は大きく喘ぎながら身体を前後に動かし始めた。俺も腰を掴んだまま亜弓の身体に何度も出入りした。
背中に激しい痺れが走り、俺は思わず呻いた。「も、もう出る、イく……」
亜弓はシーツに俯せに倒れ込んだ。俺はその身体にのしかかり、全体重を預けた。その瞬間、身体の奥から湧き上がった熱いものが一気に亜弓の中に迸った。
びゅくびゅくっ!
「ああーっ! 嶺士、嶺士っ!」
亜弓はシーツをぎゅっと掴んだまま、泣きながら大声で叫んだ。
「んんーっ!」
俺もいつもより長い時間脈動を続けるものが亜弓の中で蠢く感覚に酔いしれていた。
二人とも裸のままでベッドの上で息を整えながら、俺はやっとの思いで口を開いた。
「亜弓、今のおまえの気持ちが知りたい」
「え?」
「昨夜のことを話してくれ」
「やっぱり……ばれてたんだね……」亜弓はひどく申し訳なさそうな顔で言った。「嶺士にはとっても罪作りなことをしたって……思ってる」
「うん」
「怒ってるでしょ? ごめんね」
俺は返す言葉を探しあぐねていた。
「でも、そんなあたしをまた抱いてくれて……ありがとう」
涙ぐんで震える声で言った亜弓の顔を見ることなく俺は言った。
「初めて……だったのか?」
亜弓はこくんとうなずいた。
「ほんとか?」
「ほんと……」
「じゃあ、また智志に抱かれたいって思ってるんだろ?」
亜弓は黙っていた。
「まあ、智志は明後日日本を発って海外に移住する訳だから、おまえがそうしたくても無理だけどな」
俺のそんな嫌味な言い方に焦ったように亜弓は言った。
「思ってないよ、あたしまたあの人とあんなことしたいなんて」
ふう、と俺はため息をついた。「どうかな……」
「信用してくれないの?」
俺は天井を見つめながら言った。
「智志とはできないかもしれないが、俺以外の男と寝るチャンスはこれからもあるんじゃないのか? おまえは専業主婦だし」
亜弓はひどく悲しい顔をして目を見開いた。
「信用してくれないんだ……」
俺は大声で言った。
「あんなとこ見せつけられたら信用なんてできないだろ! おまえと智志が抱き合って、繋がって、一緒にイくところまで俺は見てた。この気持ちがわかるか?」
亜弓の頬を涙が伝った。