03.密通-1
三《密通》
立ったまま亜弓と智志が向き合っている。
亜弓は智志の顔を見つめ、何か言ったようだが良く聞こえない。
亜弓が智志の手を取ると、彼はびっくりしたように目を見開き、緊張した面持ちでそれでも彼女の目を見つめ返した。
俺の心臓は速打ちを始めた。
しばらくして彼の胸に手を当てて、亜弓はまた何か小さな声で呟いた。
智志は泣きそうな顔で亜弓の目を見つめている。亜弓は彼の頬を両手で包み込み、顔を近づけて唇を重ねた。
「(なに?!)」俺は息を止めて目を見開いた。「(亜弓の方から?)」
二人が客間に入って行ったので、俺は足音を忍ばせ、電灯が消されたリビングに入った。そして客間のドアに耳を当てた。
智志の声が聞こえる。
「あ、亜弓ちゃん、だめだよ……」
俺は気づかれないように少しだけドアを開けて中の様子を窺った。部屋の中は灯りが消えていて暗かった。
客間に敷かれた布団の上で智志は上半身を起こし泣きそうな顔になっていた。亜弓はすでに黒い下着姿になっていた。智志も黒いぴったりとしたビキニタイプの下着を身につけていた。俺も同じようなものを数枚持っている。偶然とは言え、智志がそういうパンツを穿いていることが無性に腹立たしかった。
亜弓は彼の半袖のスウェットをめくり上げ、智志の露わになった厚い胸板をそっと手のひらでさすった。そしてそのままそのスウェットを脱がせ、自分のブラも取り去ると、再び彼を仰向けにしてその身体に覆い被さった。二つの乳房を押しつけて、彼の身体を包み込むように抱きながら亜弓は智志の唇に自分のそれをあてがい、濃厚なキスを始めた。
口を離した亜弓が智志の横に仰向けになり、彼を促すと、彼はおそるおそる身体を起こして亜弓に覆い被さった。
「いいの? 亜弓ちゃん」
智志はろれつの回らない言葉を小さく発した。
「(酔った勢いで、あいつ……)」俺は小さく歯ぎしりをした。
「きて。大丈夫だから」
亜弓は上になった智志の下着に手を掛けた。
「あ、自分で脱ぐから……」
智志はそう言って膝立ちになり、すぐにそのまま自ら下着を脱ぎ去り全裸になった。
「だめなんだ……亜弓ちゃん……」
亜弓はもう一度彼を仰向けに寝かせ、彼にキスをした後、耳元で何かを囁いた。そして彼の胸や腹をまるで子供をあやすように優しくさすった。
亜弓はその高校時代と変わらない智志の逞しい身体を目の前にしてはあ、と熱いため息をついたように見えた。
俺は昨夜亜弓がベッドの上で言っていたことを思い出していた。
『かっこよくてセクシーな男の人の身体を見れば女だって熱くなるものだよ』
やがて亜弓は智志の身体の中心にあるものを両手でそっと握り、舌を這わせ始めた。
「あっ!」
智志は言葉にならない小さな叫び声を上げて上半身を起こした。
「亜弓ちゃん! だめっ!」
亜弓はにっこり笑って彼をなだめ、ゆっくりと寝かせた。
ヤツのものを咥え、舌で舐めながら口を上下させているうちに、それはぐんぐん大きさと硬さを増していった。
いつしか智志ははあはあと大きく胸を上下させ喘ぎ始めていた。
亜弓はその行為を続けながら、器用に自分の下着を脱ぎ去った。それから智志の身体に跨がって、すっかり準備の整った彼の熱いものを自分の秘部に導いた。
「ああ、亜弓ちゃん!」
智志は顎を上げて叫んだ。