03.密通-2
「(えっ? ゴムは? コンドームはつけないのか?)」
俺はとっさに心の中で叫んでいた。
今考えると、目の前で起きている事実はそれどころではないはずだった。自分の愛する妻が他人、それもあろうことか俺の親友の男に寝取られようとしているのだ。避妊具を付けようが付けまいが、夫としてそれを阻止することが先じゃないのか?
あっけなく亜弓と智志は繋がり合ってしまった。俺の身体はかっと熱くなり、全身から汗が噴き出した。
亜弓は身体を上下に揺すり始めた。
智志が大きなため息をつき、うっとりしたように言った。
「あ、亜弓ちゃん、温かい……」
「き、気持ちいい? 智志君」
「うん、すごく……あ、も、もうすぐ……」
俺は亜弓との行為の時、いつもコンドームをつけている。今まで一度も生で挿入したことはない。なのに亜弓は智志に何もつけさせないまま受け入れている。俺の身体の中で、鉄が溶けてどろどろになって煮えたぎるような、今まで感じたことのない熱い思いが嵐のように駆け巡り始めた。
「イって! イって!」
亜弓が叫んだ。ぐうっと呻いて智志は身体を大きく跳ね上げた。亜弓は身体を倒して彼の身体にしがみついた。びくびくと同じように身体を脈動させる二人の繋がった結合部分の隙間から、どくんどくんと白い液が湧き出してきてシーツにぼたぼたと落ちた。
「(イったのか? 亜弓の中に出したって言うのか?)」
俺は激しく狼狽していた。
息を落ち着ける間もなく、智志は起き上がり、息を荒くしたまま亜弓の口に吸い付いた。そして彼女の頭を抱え込んで貪るように舌を絡め始めた。それはまるでヤツの中のスイッチが切れたような豹変ぶりだった。
智志が亜弓から身を離した時、ヤツのものは力を失っていなかった。まだ大きく天を指して、たった今放出した自らの白い液をまつわりつかせていた。それを見た時、俺は智志の中にぎらぎらした目の野性のオスの姿を見たような気がした。
智志は亜弓を四つん這いにさせると、背後からそのいきり立ったものを再びその中心に突き立て、一気に挿入させたかと思うと、何かに取り憑かれたように激しく腰を前後に動かし始めた。
俺はもはやこののぞき見行為に疲れ果てていた。得体の知れない虚無感と一種投げやりな感情が頭の中をぐるぐると回っていた。
気づかれないようにそっと客間のドアを閉めた俺は重い足を引きずるようにして二階への階段を上がっていった。