美姉妹 凌辱-1
教育熱心な家庭に和奏《わかな》と穂花《ほのか》は育った。
姉、和奏と穂花は二歳違いの聡明な美姉妹として近所で有名であった。
しかし、口煩い母親と厳格なまでに頑固な父親にこの姉妹は内心霹靂としていた。
できるだけ外ではいい子に。
この姉妹は母親が納得できる言動をできるだけしてきていた。
「本当、嫌になっちゃう」
ゴロリとベッドに横たわった和奏は姉の部屋に来ていた穂花に愚痴をこぼす。
働いたことのない母親はいつだって自分の理想像をこの姉妹に押しつけてきた。
「それよりさ」
穂花は階下の物音に耳を澄ますと小声で和奏に話しかけた。
「お姉ちゃんが大学生になったら、お母さんたち旅行に行くんだってね。その間、あの小言から解放されると思うとウキウキしちゃう」
「ほーんとそうね。男友達を連れてきただけでガミガミうるさいったらありゃしない。早く旅行に行ってくれないかな。そうしないと、もう、私。毎日が息苦しくて家出したくなる」
「えー。お姉ちゃんが家出したら私に集中するじゃない。そんなことやめてよね」
二人の間からはぼやきしか出てこない。
「でも、そろそろだよ」
「なにが?」
「旅行」
「本当?」
「うん」
「やったね! いつ?」
穂花は和奏の耳元で囁いた。
「ねー。もうすぐでしょう?」
勝ち誇ったように穂花が笑った。
「一泊二日か。それでも、お母さんのあの思い込みの激しい理想の姉妹を演じなくていいわけだ。やった!」
「でしょう」
「あー。私までウキウキしてきちゃった。友達のところに遊びにも行きたいけど、あの地獄耳は怖いからな。家でピザでも取ってゴロゴロしていよっと」
先程までぐったりとしていた和奏とは思えないほどに表情が生き生きとしている。
「受験も終わってひと段落したしね。あとは一人暮らしを認めてもらえたらな」
「それはなし! 私に集中砲火がくるじゃない。それに、うんと言うわけがない。あの、お父さんが。お姉ちゃんに彼氏ができた時も大騒ぎだったじゃん」
「大地には悪いことしたな」
「停学まで追い込んだお母さんは凄まじい。けっきょく他の高校へ編入させられたんだよね」