ふ-7
「まさかココで白石に会うとは思わなかったよ」
「うん・・・」
派手じゃないと言っても
毛皮のファーのマフラーをして
ピンヒールは外さないんだな。
そのおしゃれが誰のためなのか気になる俺は
自分の気持ちに戸惑って
話の続かないその空間が居心地悪くて
「そのヒール、似合ってる」
足元を見てそういえば
白石は、くすくす笑い出した。
「何?」
「新田くん、噂通りなんだもん」
「噂?」
「うん。さらっと自然に女の子が喜ぶようなこと言うのね」
「嘘はついてないよ」
「うん。ありがとう。私の彼とは大違い」
男が、居るのか。
当たり前か。
横眼で見る白石は確かに可愛い。
加賀が可愛い子が総務にいるって騒いでたっけ。
彼氏持ちだよ。
そう月曜日に加賀に教えてやろう。
「今日は彼と一緒じゃないのか。花金なのに」
少しからかってそう言った後に顔を見ると
苦笑いして泣きそうな顔になった。
「すっぽかされちゃった」
見えない涙が、流れたような気がした。