或るデート-1
1.
曲が終わって、芳雄は紀子の乳房に、胸をそっと押し付けた。
「海の夜景を見に行かないか?」
「はい」
JR田町駅近くのダンス会場で、二人は出会った。
想えば想われる・・・以心伝心と言うのか、二人の相性はよかった。
芳雄のリードに紀子はピタリと付いてくる。
会場を出た車は、札の辻のブリッジを渡った。
芳雄は、左手を伸ばして助手席の紀子の手を握った。紀子の小ぶりな手が、芳雄の指を握り返す。 指先が冷たい。
芳雄の指からじわじわと電流が流れて、紀子は指先から体中にエネルギーが満ちていくのを感じた。男に手を握られたのは何時のこと? 記憶に無いから、ひょっとすると初めての経験かもしれない。
夕方のラッシュの終わった通りは、スムースに流れて行く。
芝浦海岸の、東京湾を見渡せる埠頭に車を停めた。
レインボウ・ブリッジの照明が、鮮やかに東京湾の水面に映えて、風のぴたりと凪いだ海面は身動きもしない。
芳雄は、紀子の肩を引き寄せた。
紀子は芳雄にもたれて、目をつぶった。
唇が合わさると、芳雄の手がドレスの胸元を開いて乳房に伸びた。
「ふう〜〜〜っ」
男の手が肌に触れて、紀子はブルッと震えた。
芳雄と踊りながら、フエロモンがウズウズしていた。
芳雄の腕に力がこもって、紀子の腰が車のコンソールに当たった。これ以上、近寄れない。
ドレスの下から、芳雄の手が伸びてきた。
「ごめんなさい、今日はパンスト履いてるの」
腹のたるみが気になって、きつめのパンストを履いてきた。
ピッチリと肉を締め付けるパンストに阻まれて、芳雄の指は生地の上から割れ目をなぞっている。
いつの日か・・・、こんな事態が来ることを予想しないではなかった。むしろ期待していた。
夫と死に別れてかれこれ10年が経つ。
寂しいときは、クリトリスを弄って憂さを晴らしてきた。
男の肌が恋しかった。