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【SM 官能小説】

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宴 〜形〜-8

数時間後。
「はふ……」
見慣れない部屋で、目と肌に馴染んだパジャマだけが妙な現実感を伴っていた。
―夕方の早い時間に地下室入りをしても四人で楽しみ終わる頃には夜の遅い時間になるので、胤真は泊まっていく事を勧める。
家に両親がいる事を考えるとおおっぴらに睦み合う事のできない瓜生兄妹はその言葉に甘え、最近はお泊りセット持参で草薙家へお邪魔するようになっていた。
兄妹とは言っても顔があまり似ていないので、屋敷の使用人達は二人の事を『胤真の友達のカップル』程度にしか認識していないらしい。
その証拠に、用意してくれる客室はいつも夜具が一組しか伸べられないのだ。
そんな臨時の愛の巣で芳樹と体を触れ合わせて穏やかな時間を過ごす時、真矢は無上の幸せを感じる。
今夜は先に布団の中で横たわっている芳樹の横に、真矢は滑り込んだ。
「へへ……」
照れながら、真矢は芳樹の首に腕を回す。
「お兄ちゃん」
真矢は芳樹の唇を奪った。
―禁断の関係が始まってから、真矢は芳樹を『お兄様』と呼んでいる。
だがこうやって睦み合っている時は、昔のように『お兄ちゃん』と呼んでいた。
「ん……」
奪われた唇を奪い返し、二人は唇を重ね合う。
「ふ……」
実妹を抱きしめる実兄の腕に、力が籠った。
「……考えてる事が、あるんだ」
キスが一段落すると真矢を抱きしめたままで、芳樹は告げた。
「ん?」
胸にひたひたと押し寄せる幸福感に包まれたまま、真矢は夢見心地で問い返す。
「三年になったらさ、僕は進学しようと思う」
「ん……」
「少し離れた大学を受けて、一人暮ししようと思ってる」
「……え?」
「時々さ、遊びに来てくれると嬉しい」
「……!うん!」
「それと……」
芳樹は、真矢と唇を重ねる。
「大学を卒業したら、地方に行くつもりなんだ」
「お兄ちゃん!?」
「真矢。お前もさ、一緒に来ないか?」
悲鳴に似た声にもめげず、芳樹はそう伝えた。
「親には申し訳ないけど、僕は真矢が好きなんだ。誰にも、渡したくない」
「おにぃ……ちゃん」
「親の目の届かない場所で、二人で暮らそう。誰にも兄妹なんて知らせずに……」
真矢の目が潤む。
「ね……それって、プロポーズ?」
「そう取ってくれると……嬉しいな」
真矢は何度もうなずいた。
「ん、うん……!」
「近親相姦がタブーとされるのは、血が濃過ぎるからだ。なら、残念だけど『結果』を出さなければいい……世の中には子供がいなくても、仲睦まじく暮らしてる夫婦がたくさんいるじゃないか」
「そ……だね。残念だけど……」
禁忌の関係を持つ二人が犯す、最大の罪。
それは、永遠の愛を誓い合う事―。


同時刻。
胤真と智佳もまた、寄り添って甘い夜を過ごしていた。
顔中に降り注がれるキスの雨が、くすぐったいけど心地良い。
その心地良さに身を委ねていた智佳だったが、不意に思い出した疑問を胤真にぶつけた。
「ね……」
「うん?」
飽きる事なく智佳へキスし続けていた胤真は、不意の声に首をかしげる。
「今日……あんまり喋らなかったよね。何で?」
その質問に、胤真は苦笑した。
確かにいつもなら、言葉責めも含めて胤真は割と喋る。
「お前が目隠ししてたからだよ」
「え?」
「俺が喋らない事で、不安が倍増したろ?真矢ちゃんの奉仕でイカされそうになった時、俺を探して泣き喚いたりしてさ」
「あ……あの時、本当に不安だったんだもん……」
頬を赤く染め、智佳は胤真の首にしがみつく。
そんな甘える動作を少し前の自分がしたりしたら、気持ち悪くて吐き気を催していたかも知れない。
全く、自分で自分が信じられないほどの変貌ぶりだ。本当に、今の自分は胤真を必要としている。
―いや、そうなるように追い込んだのは……。
智佳と胤真、どちらだろうか?


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