第24話 『10人11脚、ムカデ競争、障害物競走』-1
第24話 『10人11脚、ムカデ競争、障害物競走』
「顔色も戻りましたり、呼吸も深くなりました。 体温も平熱ですので、もうしばらく休ませれば大過なく回復すると思われます。 改めて、先ほどはご指摘ありがとうございました」
救護ブースから戻るなり、教頭が恭しく頭をさげた。 物腰、挙措が先ほどまでよりもぎこちない。 南原の感情を慮るがゆえに、一種怯え気味な小動物の瞳になっている。
教頭からすれば、一生徒の健康を気遣う男性など、今までに会ったことがないのだろう。 南原が一般男性と趣が違うように認知しつつも、たかが生徒1人の体調不良を放置しただけで感情を害するとは、夢にも思っていなかったに違いない。
それはその筈で、現代社会、すべての女性は牝であり、社会を円滑に回すための道具に過ぎない。 道具の健康管理は基本的には道具の仕事で、ゆえに男性が関わる余地などない。 だから99%以上の男性が女性の体調を考慮しない。 つまり、少女の体調を気にする時点で、南原は男性1%未満のマイノリティに該当し、教頭からすれば『異端』の範疇に属する。
「……それはそれとして、ここから『午後の部』が始まるんですね」
南原はC15番の話題を流し、グラウンドに集まる少女たちを話題にした。 乳輪を黄色く塗ったBグループ生が、10人1グループで3組並ぶ。 横一列になった少女たちは横腹同士を密着させ、互いに背中へ手を回していた。 お互いに背中から脇へ腕を回し、並んだ乳房を鷲掴む。 自分の右脚と右隣の左脚、自分の左脚と左隣の右脚をブルマに通し、膝まで引っ張りあげて連結する。
手元のプログラムには、プログラム19番『応援團長による全体応援』に続き、プログラム20番『10人11脚』とあった。
「その通りですわ。 『午前の部』がクラス全員で取り組む競技な一方、『午後の部』はクラス代表が競います。 チームワークもさることながら、個人個人の身体能力がものをいう場面が増えるでしょう」
「となると、それぞれのクラスからエースが登場するわけですか」
「そうなりますわね。 出場回数、種目に制限はありませんから、出ずっぱりな生徒も数名出てくると思われます」
ブルマの装着を終えた少女たちが、交互に脚を引いて前屈みになる。
『いちについて、ようい――』
パァン。 体育委員長の絶頂に連動して空砲が鳴り、3組が横一列になってスタートした。
「「ぱい、おつ、ぱい、おつ、ぱい、おつ、ぱい、おつ!」」
掛け声に合わせてテンポよく脚を運ぶ。 並んだ10人の両側がやや遅れ気味なものの、ほぼ真っ直ぐな列を維持したままで前に駆ける。 駆けながら掴んだ乳房を上下に揺する。
「「ぱい、おつ、ぱい、おつ、ぱい、おつ、ぱい、おつ!」」
脚の運びと掴んだ乳房は連動していた。 前に運ぶ脚側の乳房が上に、まさに地面を蹴らんとする脚側の乳房が下になるように、ブリッブリッと握り捻る。 僅差で一着を射止めたのは、脚、乳房、そして声をピタリ揃えた2組だった。