第24話 『10人11脚、ムカデ競争、障害物競走』-2
プログラム21番『ムカデ競争』
乳輪が赤い生徒が5人ずつ縦一列に並ぶ。 と、それぞれが地面に膝をつき、オーソドックスな四つん這いになった。 自分の右手と前にいる少女の右脚を、自分の左手は前の左脚と履いたブルマを肘までひっぱりあげて結ぶ。 自分の右脚は後ろの少女の右手と、左脚は左手で結ぶ。 スタートライン。 グロテスクな双頭バイブが4本並べてあった。 少女たちは双頭バイブを口に咥え、イラマチオ以上、咽喉を貫通するまで深く呑む。 吐気を我慢しながら、双頭バイブのもう一端を、前にいる少女の肛門にねじ込む。
グリグリ……ゴクリ、グブリ……ズズズズ、ズチュッ、ムチュッ……グヌリ、ゴクリ。
バイブを深々と直腸まで届けとばかり肛門に挿し、反対側を喉の奥深く迎え入れる。 手足を繋いだ次は、双頭バイブによる肛門と口の連結だ。 後ろの少女はバイブを咥えたまま唇を窄め、ちゅばっ、前の少女が晒す灰色の蕾に接吻する。 40センチを超える肌色の双頭バイブが消化管の両端に吸い込まれ、外からは全く見えなくなった。
「『ムカデ人間』という人体実験をご存知ですか? 旧世紀の映像作品が出典です」
教頭が南原に尋ねた。
「……」
南原は黙して答えない。 当然『ムカデ人間』の謂れは知っている。 男性が修めるべき一般教養として、あらゆる文化――文学、建築、音楽、美術、そして映像――は習得済だ。 『知っているか』を尋ねられたことが心外なため――つまり、知らないわけがないのに、知らない可能性を考慮されたことが不本意なので――答えない。 すると教頭は、南原がムカデ人間のことを知らないと見て解説を始めた。
「『ムカデ人間』といいますものは、肛門と口を連結し、複数の消化管を繋ぐことで、排泄物の処理と食事の吸収率向上を同時に達成する処置ですわ。 節足動物たるムカデの節をヒトに置き換える、と思ってくださいませ。 具体的には、這うことしかできないように四肢の靭帯を切断し、前歯と犬歯を抜きます。 唇を肌と口腔上皮の境目で切除し、頬まで切れ込みをいれて、前にある肛門に口全体を密着させ、縫合すれば完成します。 この競技では『ムカデ人間』に倣い、疑似的にムカデの節となった上での速さを競います」
教頭が説明している間に準備が整い、3組の『ムカデ』がスタートした。 喉と腸が双頭バイブをすっぽり咥えて隠しているため、一見すると、四つん這いになった少女たちが肛門に口づけしながら一列になり、えっちらおっちら競争している。 少しでも息んでしまえば肛門からバイブがはみ出し、喉奥をつついて嘔吐させるだろう。 また、少しでも余計に履きだそうとすれば、既に結腸付近まで刺さっているバイブが最後の一線を越え、汚物を伴って溢れだすとも限らない。 傍目には長閑(のどか)な競走だが、口と腸に極度の緊張を強いる過酷なレースだ。 南原は、かつて視聴した『ムカデ人間』の映像が脳裏をよぎり、何とも嫌な気分で観戦した。 ちなみに1位が1組、2位3組、3位2組。