ACT 1-1
過去に仕事をいくつか世話したことのある広告制作プロダクション勤務のKからメールが届いた。
仕事の合間に趣味でクラブイベントのオーガナイズとDJをやっていて、個室のVIPルームを用意するから来ないか、というものだった。
もう40歳過ぎだしクラブに行くのはかなりご無沙汰だったが、久しぶりに顔を出すことにした。
「昔ほんと世話になったんで今回はマジで接待しますよ!素人のダンサーの女の子たちが出演するんで、ハメたい女がいたらおれに言ってください。あいつらおれの言うことは絶対ですから。Yさんギャル大好きでしょ?」
地方都市のDJとしてそこそこ名が知れてきているらしいという噂は聞いていたし、昔からチャラい性格の男だったが、まさかそこまで権力をもっているとは知らなかった。しかも相手は素人とはいえダンサーの女の子である。生意気そうなクラブギャル好きのおれにすれば、聞いただけで涎が出そうな話だった。
当日のダンスイベント会場は思った以上の熱気だった。
冷房はきいているのかいないのか、地元の学生連中であふれかえって人いきれがすごい。
行列が並ぶエントランス横からVIP専用の受付に行き、Kを呼び出してもらう。
この地方都市にはクラブといえばまともなハコはここしかなく、今回のイベントはゲストも豪華なため、暑い夏の開放感でギャルたちの多くは露出度の高いエロい服で気合が入っているのが分かる。
久しぶりに若いギャルたちの甘酸っぱいコロンの匂いをかぐと、今夜のKのもてなしに、いやでも期待感が高まってくる。
「お久しぶりっすう!!」
あいかわらずのハイテンションで登場したKと談笑しながら、スタッフ通用口から上階にある個室VIPルームへと移動した。
ここのVIPルームからは階下のダンスイベントのショウを見下ろすことができる。VIPルームの個室を独り占めしたことはこれまでにも経験がなく、おれはもうわくわくして仕方がなかった。
「これから例のうちのダンサーの子達が前座のアトラクションやるんで。いい子がいたら言ってください。持ち帰りOKですから」
平然と言ってのけるKに思わず疑いの目を向けると、
「マジですって! だってあいつらおれから嫌われたら踊るとこなくなりますからね。そのかわりレギュラーメンバーにするって言えばもう一発ですよ。……あ、はじまった! あれですよ、あれあれ……」
暗転していたステージにスポットがあてられSEが流れ始めると、両脇の暗がりからきわどいビキニの3人のギャルたちが勢いよく飛び出してきた。
早速おれは最近仕事でも出したことのない集中力でギャルの品定めに移った。
ひとりまたひとりと順番に目を移している途中、ひとりの女に目を止め、おれは思わず声を上げた。