いつだって-1
「悪いな、買い物付き合って貰っちゃって。」
俺は忙しい親父達に代わって夕飯の買い出しを行っていた。
「ううん!私も新鮮な経験が出来た。」
買い物袋片手に肩を並べ歩くのは水原恵子、別の高校に通う高校三年で隣人だ。一か月前に家庭の事情で引っ越しそれから地元の案内や家具を運ぶのを手伝ってあげているうちに仲が良くなり。
「あの時は本当にどうもね。」
「そーんないいって!丁度暇だったし、それに…。」
「それに?」
「困ってる奴が居たら手を差し伸べるのは人として当然だろ?」
「っ!!」
そう言った途端彼女は顔を赤く染め両手で開いた口を隠す。なんだ?
バツが悪いのかそれから空気を変えるように違う話題をする。
「にっ!にしてもお父さんも少しくらい家の事すればいいのにね。」
「っ!……。」
親を悪く言われたみたいで少しショックを受け、視線をガクッと地面に下ろす。
「あっ、ご…ゴメンそんなつもりじゃ。」
「いや!いいんだ!本当の事だし、周りの人は口を揃えて言うから。」
なーんか思い出すな蓮や柊さんがそれで人の親を殴った事を…。
親父は確かに変わった、真面目に働きそして再婚もして、けれども家事は相変わらずやらず酒にもだらしがない。
故に俺がしっかりしなくちゃいけないな。
「ね、ねぇ!」
「ん、何だ?」
「この後家に帰るの?」
「えっ、当たり前だろ、その為の買い出しだし、でもまさかお隣ってだけで君が付き合ってくれるとは予想外だったけど。」
「そんな事ないよ、引っ越した時に手伝ってくれた恩も返さないと。」
「だからいいのに。」
「それに!困ってる人は放っておいちゃいけないし。」
俺の真似かよ、おいおい。
「親父が帰ってくる前に夕飯作んないとな。」
「出来るの?」
「バカにすんなよー、これでも辛い家庭環境から半ば強制的に家事はやってるからそこそこは出来るんだぞー。」
まっ、柊さんや蓮のサポートは多いにあったが。
辛いことは結構あったけど今はもう過去の事、そういっても過言じゃない、今じゃそんな事を軽く口にしても平気だ。
苦しくても笑って生きていきゃなきゃだな!
水原さんがまたも顔を赤くしモジモジソワソワし、重い口を開く。
「あ、あのっ!」
「?」
「良かったら私にも手伝わせてっ!」
え?