第15話 『クラス応援旗』-1
第15話 『クラス応援旗』
生徒会によるグラウンド整備は6時半をもって終了しました。 残りの小石拾いやテント設営、観客席の椅子設置は全校生で対応するので、各部署ごとに生徒会を解散させれば、私はお役御免と相成ります。
「〜〜♪」
鼻歌を鼻づさみ(?)ながら、原稿の朗読練習をしているだろう図書委員を解散させるべく図書室へ歩いていると、
「……?」
C棟の一室から明かりが洩れています。 学園祭では下校時間を過ぎての居残りは認められていますが、体育祭では特段の用事が無い限り教室に残ることはありません。 少し気になったので様子を伺うことにしました。
3階の真ん中、Cグループ2組の教室でした。 中から話し声が聞こえてきます。 特に声を潜める様子もないところから察するに、正規の居残り手続きを踏んだ上で教室に残っているのでしょうか。 今教室に踏み込んでしまうと、下手したら全員に指導をださなくちゃいけなくなります。 関わると面倒そうな場合はスルーが吉……とは分かっているのですが、つい朗らかな歓談気配に惹かれ、そっと戸に耳を宛ててみます。
「下地がいいかどうかで、色のノリが全然違うなぁ」
「そうみたい。 下手に酵素で毛穴処理しちゃうと、痕が腫れるし毛穴が膨らむし、逆効果になっちゃうんだよね。 オマタに絵をかくなら線香でもって、一本一本肌ギリギリまで焼くのが一番だね」
「っていうか、肌質の違いって何気に大きくない?」
「いえてる、いえてる。 『いちご』ってスベスベでキメキメだもん」
「あたしもさぁ、前から『いちごのオマンコ、綺麗だな』って思ってたけど、オマンコっていうかお肌からして違うのが分かった。 ツルツル、ならあたしのとそんなに変わらないけどさ、ツンツルテンにしたらピカピカになっちゃうなんて、いいなぁ。 お世辞抜きですっごく綺麗だよ、剃りたてな『いちご』のオマンコって』
「あ、ありがと、みんな。 だけどあたしのチツマンコ、そ、そんなにジッと見られちゃムズムズするよ。 たいした持ち物じゃないよ。 それに、チツマンコ褒められて嬉しいかっていうと微妙だし」
御礼をいったのは、声から察するに『15番』さんでしょうか。
「それにしても、みんなありがとうね。 一時はどうなるかと思ったけど、お蔭でどうにか間に合った」
「いっぺん当日仕様で見てみようよ、ねぇ。 『いちご』に描いた『クラス旗』って、確か高いところで拡げるんでしょう?」
「そうよ。 あたしがクラスの掲揚台に登って、足首を掴みながら棒の先っぽをもって、そのまま時間一杯ぶら下がって『クラス旗』になるの」
「ぶら下がれる場所っていうと……教室だと黒板かなぁ。 黒板の縁で『クラス旗』になれる?」
「うーん……まぁ、別に大丈夫と思うけど……やってみようか。 せっかく完成したんだし、まだ2号教官と約束した時間まで10分あるし」
ガヤガヤ、ワイワイ。 教室から生徒が動く気配がします。 わたしもこっそり後ろの窓から覗いてみました。
黒板の縁に両手をかけ、体操の鉄棒懸垂よろしくぶら下がっている15番。 腹筋がピクピク震え、足を『V字型』にもちあげ、黒板の上端に足首をひっかけます。 閉じていた太腿を開帳すると、体の正面で口を開けたオマンコを中心に、脚の付根から臍にかけて、お股には極彩色の模様が描かれていました。
「おお〜……ちゃんと色が残ってるぅ」
「うん。 上出来、上出来。 真ん中に『いちご』のチツマンコ挟んで、左に『2』、右に『組』。 遠くから見たら達筆だよ。 みんなのマン拓で作った文字だなんて思えないよ」
「周りの『点字』も、全然薄くなってないよ。 グラウンドだったら分からないけど、教室の隅っこからでもちゃんと読める。 『や・さ・し・い・B・せ・ん・ぱ・い・だ・い・す・き、す・て・き・な・A・せ・ん・ぱ・い・だ・い・す・き、な・か・よ・し・C・は・だ・い・す・き』……いけるいける」
「でも、大きさがマチマチだから、どうしても見にくさは残るかな。 クリトリスで朱点を打つって聞いて、いいアイデアだって思ったけど……体で点字を描くなら乳首の方がよかったんじゃない?」
「それだと『三文判』になっちゃうっしょ。 難癖つけられちゃ、ウチらはいいとしても、先輩に迷惑かけちゃったら最悪じゃん。 『ちゃんと変態な自覚をもって旗を作りました』っていう言い訳になるかどうかが肝心なんだから、チツマンコ絡めて頑張ったっていう過程が大事なの」
「先輩喜んでくれるかなぁ。 学園の旗って、いままでのはグロいオマンコオマージュばっかりだったし、1人1人にメッセージ付きな旗なんて中々ないよね〜」
2組生徒の呟きを耳に留めながら眺めると、なるほど図柄の意味が分かりました。 『2組』と大書した文字を囲んでいる点々は、点字ですか。 話から察するに、生徒たちが自分のクリトリスに色を塗って、15番に押しつけて作った点字でしょう。 ということは、中央の『2』と『組』の文字も、所々字体が縒れているのは、1人1人がオマンコに色を塗ってから15番にマン拓して書いたのでしょう。 確かに生徒達の股間からは、青、黄、緑、カラフルな色彩が覗いています。 その上で一様に股間突端には赤々とクリトリスが捲れていて、それは点字と同じ色でした。