第11話 『生徒会、管理委員と図書委員』-1
第11話 『生徒会、管理委員と図書委員』
17号。 数学担当。 Aグループ3組担任。 自分に備わった様々な肩書の1つに『生徒会顧問』があります。 A0番を筆頭に、上級生からなる生徒会を管理、監督する係ですね。 体育祭では諸々の準備が生徒会に任されていて、基本的には自分も生徒に一任しています。 但しホウレンソウ(報告・連絡・相談)は欠かさないよう躾けてあるので、この時期になると毎日のように生徒会から諸々の報告が上がってくる。
トントン。 数学準備室のドアを誰かがノックします。
「……おはいり」
「失礼します。 体育祭関連で報告にあがりました」
ガチャリとノブを回して入ってきたのは、管理委員長のA11番さんでした。
「今年度の一文字は、1組が『乳』、2組が『穴』、3組が『膣』に決まりましたので、クラス文字をあしらったクラスタオルを発注しようと思います。 素材、大きさは例年通りで、色を3色刷りから2色刷りに落とした分、色落ちが少ない耐性インクにしてもらおうと考えてます」
ハキハキした、実に気持ちいい生徒です。
「宜しい。 他には?」
「はい。 当日配布予定の団扇(うちわ)とパンフレットです。 これは来賓の方々にもお配りするものなので、学園の校章をあしらった柄で、プログラムを今年度用に書き替えて、あとは昨年と同じ形式で発注しようと思っています。 見本はこちらです」
団扇には、美術部が製作したんだろう、見慣れたデザインがあしらわれています。 何層にも広がった陰唇の中央奥深くで『2本のペンが交差した校章』が浮かんでいました。 一見しただけでは写真と見紛うばかりにリアルな膣の絵ですが、よくよく見れば細かい墨滴の素描で丁寧に描かれています。
「柄はこれでいいとして……うちわとプログラム、今年も両方発注する、と……」
「え……あの、いけませんでしょうか?」
「いえ別に。 予算に収まるのであれば問題ありません。 もし予算が足らないようでしたら、団扇の裏面にプログラムを印字してはどうか、と閃いただけです。 気にせず続けてくださいな」
手元の見本を返し、続きを促す。
「あ、はい。 最後に追加の備品発注ですが、バトンが2つ、石灰粉が8袋――」
手元の資料に視線をおとすと、管理委員長はお金が絡む諸々の仕事の報告に入りました。
「……」
頭の中で、各品目の値段を合わせます。 タオルの値段、うちわの値段、プログラム印刷代金に追加で用意する品目の数々。 年度当初の生徒会予算、学園祭で使用した生徒会費、各種イベントでの出費、さらには体育祭以降で大型の出費が予想される項目たち……すべての値段は概略頭に入っているので、説明を一通り聞けば、出費が健全かどうかは判断できます。
「――ゼッケンの補修が8セット、レンタルクーラー、レンタルパイプ椅子、レンタルテントが4張りで、ええっと――」
……少し、予算オーバーしそうな気配がしてきました。 15万4千ばかり、どこかで節約させた方がよさそうです。 とまれ、体育祭の物品管理については、このまま彼女に任せても大過なさそうな気がします。
……。
そろそろ体育祭に関する原稿が揃った頃合いです。 図書室では委員たちが首を付き合わせて推敲、校閲に勤しんでいることでしょう。 というわけで、たまには私から生徒会の様子を伺うことにします。
放課後、図書室の片隅。 予想通り、図書委員長のA2番さんを中心に、各クラスの図書委員が集まっていました。
「あっ……」
最初に私に気づいたのはA2番さんでした。
「17号教官、こんにちは」
「こんにちは。 みなさんの仕事ぶりを見せて貰いに来ました。 ええ、ええ、挨拶は略式で結構ですから、そのまま手を動かしてください」
次々に直立不動になって頭を下げ、オマンコを拡げようとする委員さんたちですが、本を読む部屋は静粛に。 窘めつつ机の上を眺めます。
「こことここ、フォントのサイズが違う。 なおしとかんと後で困るしょや」
「は、はい」
「あとは、ここも半角になってる。 数字だからって気を抜いちゃダメ」
「あっ……! す、すいません!」
「一々謝らなくていいから、ちゃっちゃと修正する」
「はいっ。 すぐにしてきますっ」
大机の右側。 配布するパンフレットの草稿を仕上げにはいっています。 修正する部分に上から新しく印刷し直した紙を貼り、貼った後が分からないように修正する、地味で根気がいる作業。 ただ競技名だけが載ったパンフレットではなく、競技ルールや配点設定、競技の歴史や過年度の競技結果等まで載せてあるため、字数に換算すれば軽く5万字を超えるでしょう。 丁寧に印字したつもりでも、ミスが1つ2つでるのはしょうがありません。