宴 〜絆〜-3
「草薙さん……」
芳樹は、生唾を飲み込む。
「変な音がするとは思ったけど……まさか、いつもこんなオナニーしてるの?」
芳樹の指が、ショーツ越しにバイブを引っ張った。
「ん!あ、ああっ」
抜かれないように、智佳はそこへ力を籠める。
「ち、違うのっ。これはっあっ!」
尖りきった肉芽をつままれ、智佳の唇からなまめかしい声が漏れた。
「わ、わた、私のっ、マスターのっ!」
「マスター?」
芳樹は目を見開く。
「へええ……同好の士がこんな身近にいたなんて、全然知らなかったなあ」
「ど……同好?」
いぶかしげに智佳は問い……艶声をほとばしらせた。
くねり続けるバイブを、芳樹が前後に動かしたのだ。
「やっ、駄目えっ!動かさないでっ!」
芳樹は片手で、智佳の乳房を揉み始める。
「すぐイキそうなくらい感じまくってるのに、草薙さんのご主人はまだ放っといてるのかい?なかなか躾に厳しいみたいだねぇ」
芳樹は邪魔なショーツを脇に寄せ、バイブを直に動かし始めた。
「うっ!ひううっ!あ、んああっ!駄目、もう許してっ……!」
「許さない。廊下なんかで草薙さんがはしたなく恥ずかしくイッちゃうとこ、僕に見せてよ」
「やだ、やだあっ!イキたくっ、なんかっ!」
芳樹は、激しくバイブを動かす。
「ひっ、あ、ああはっ!やっ、いやあっ!」
だが、智佳は嫌がるばかりでなかなかイカない。
「ふうん……ご主人様じゃないとイキたくないって事?躾のいい肉奴隷なんだねえ、草薙さんは」
芳樹は更に激しくバイブを動かしてから、智佳の傍を離れた。
肩でせわしなく息をする智佳に、芳樹は言う。
「こんな身近に素晴らしい趣味を持つ者同士がいるんだ。せっかくだから、草薙さんのご主人と対面させてよ」
昼休み。
仮面を被って優等生に成り済まし、友人とお喋りしている胤真の元に異変が届いた。
智佳専用の着メロで、胤真の携帯が鳴る。
「智佳か。何かあったのか?」
『あ、あのね胤真……』
歯切れの悪い智佳の口調に、胤真は不安を覚える。
『ばれちゃったの。今日の……』
「…………は?」
後で振り返ると、この時出した声は胤真の長い人生の中でも五指に入るほど間抜けなものだった。
『クラスメイトの男子にね、今日の課題がばれちゃったの!』
一気にまくし立てられて、ようやく胤真は理解する。
「おい……」
『でもその人は胤真と同じ趣味の人で、ばらす心配はないの。けど一度、奴隷を見せ合いたいって言われちゃって……どうしよう……?』
胤真は思わず口をヘの字にひん曲げた。
優等生として通っている自分がのこのこと出ていったら、何が起きるか分かったものではない。
だが……。
「分かった」
気が付くと、胤真はそう答えていた。
「それで、時間は?いつならいいんだ?」
『放課後がいいって言ってたけど……大丈夫?』
「……何とかするよ」
−電話を切ると、聞き耳をたてていた友人が肘で胤真を小突く。
「何だよ、智佳ちゃんからか?」
ニヤニヤと笑いながらの問いに、胤真はうなずいた。
「まあね」
「カ〜ッ!うらやましいよなあ、あ〜んな可愛い再従姉妹が身近にいるなんて!俺なんざ従姉妹とも疎遠だしさあ……」
「仲がいいのは、家が近いからさ。あっちも昔馴染みのお兄さんくらいの感覚だし」
「マジ!?お前が手ぇ出す気ないなら、俺に紹介してくんねぇ!?」
胤真は失笑する。
「無理。あいつの男の好み、かなり厳しいから」
「ああ、お前を毎日見てりゃ嫌でも厳しくなるわな……って、俺は紹介できないくらいに不細工って事かよ?」
友人は自分の顔をぶにっと引っ張り、胤真の笑いを誘う。
「そういう訳でもないが……」
掛け値なしの美少年な胤真と並んでわずかに見劣りするくらいだから、友人もかなりの美少年である。
「趣味が合わないと思うから、さ」
「趣味ぃ?」
含みのある言い方に、友人は眉をしかめた。
「俺と智佳は、相性ばっちりの共通した趣味があるんだ」
相性ばっちりじゃなきゃ、ああも激しく何度もイカないよな。
内心で、そう言葉を付け加える。
「何だ、お前やっぱり智佳ちゃんを狙ってるんじゃないか」
「趣味の点ではほとんど手中に収めた感じかな」
「け〜っ!」
わざとらしく手を振り、友人は顔を渋くした。
「ま、あんだけ可愛くてボインとした乳の持ち主をほっといたら、お前頭がキてんじゃねーかと疑いたくなるけどさ」