第2章 新鋭女刑事…だった頃-4
夕方18時、張り込みに当たる刑事が集まり打ち合わせを始めた。朱音以外は全員男性刑事である。当然の事ながら朱音は年上の男性刑事らの中でも気後れも物怖じもしない。それどころか率先して段取りを決めていた。
「まず張り込みの現場の流れを掴む為、キャバ嬢狩りの犯行時刻の集中されると言う3時から5時の間よりも早めに開始しましょう。」
口にはしないが急な張り込み捜査を快く思っていない刑事が多い。感じ方によっては少々棘のある口調で朱音に聞いたのは33歳の中堅どころの刑事、風間俊一であった。
「早めにって、何時からやるんだ?」
朱音はそのような棘や嫌味など気にしていない。いや、慣れてしまった。普段から若い女がしゃしゃり出てくるのを良く思っていない男性刑事にはそう言う態度を取られている。嫌がらせも多い。だがそんな事など気にしているならば初めから刑事と言う道を選んでいないと割り切って職務をこなして来た。刑事になってから今までの間、朱音の精神はだいぶ鍛えられたのであった。
「深夜0時から始めましょう。」
「はっ!?早くね??」
あからさまな態度に朱音は毅然と答える。
「繁華街には風俗店もあります。風俗店で働いている女性達も日払いでお金を持ってます。彼女達も標的になる可能性は大きい。ですから風俗店に働く女性らが勤務を終える時間から張り込んで不審な人物がいないか監視する必要があるからです。長い時間張り込んで何度も同じ顔を見るようならその人物をチェックしてまずは情報を集めます。暗視カメラで怪しい人物の顔を撮り署に戻ってから確認します。今日の所は決して張り込みをしている事に気付かれず捜査を進めてください。」
「ハイハイ。」
何でお前が仕切ってんだよ的な態度にも慣れた。もはやいちいち気にもしていない。地道な捜査で汗を流すのが刑事だと思っているし、事件解決に近道はないと考えている。朱音は他の誰よりも汗を流していると自負している。武術も射撃も毎日鍛えている。彼氏ももはや邪魔な存在であり、たまたまある事が原因で別れた訳だが、正直鬱陶しい思いをしなくて済みせいせいしている。朱音はずっとなりたかった刑事の道を正直に真面目に、必死に生きているだけだ。それがおかしいと言うなら、ぎゃくにその人間がおかしいのだと思っている。朱音は特に女性を狙う犯人が許せない。だから今回強盗強姦までして更に殺人にまで及んでいる犯人がどうしても許せなかったのだ。朱音は絶対に自分の手でその犯人を捕まえると言う信念を持ち捜査に当たっているのであった。