初めての後輩-9
スパァーンッ!!
案の定空気を切り裂くような平手打ちを休み時間の人気のない裏で鬼のような形相をした若葉にされて。
「何してんのよっ!!」
「……。」
「自分が何をしたか分かってるのっ!?」
その顔は今にも泣きそうだ、彼女の気持ちはよく分かる、殴られて当然だとも思う、ゆえに弁解も何も出来ず、ただひたすら。
「…ごめん、若葉。」
「っ!!」
でも私はぽっかりと空いた穴を…いや、そんなの言い訳か。
「一条君、可哀想…。」
突き刺さる彼女の言葉。
確かに悪いのは私だ、反論の余地なんかさらっさらない、でも…、こっちだって好きでこんな事した訳じゃない!若葉なら分かってくれるって信じてたのに。
「巴ちゃん、最低だよ…一度ならず二度もこんな真似を。」
「は?」
それ、確か小鳥遊君がまだストーカーをしてた頃の。
「何よそれ…。」
「え?」
「そんな話ずっと前の事じゃない。」
「巴ちゃん、…それが何?あの時だって私傷ついたんだよ?一番の友人に裏切られて。」
「だから何よ!そんなのずぅーーと前の話じゃない、んなつまんない話いちいち引っ張り出して人を浮気ばかりの男ったらしみたいに言わないでよ!」
「えっ、開き直る気っ!?それは事実でしょ、大体さっきまであんなに反省して。」
「だから弁解する気はないって言ったじゃない!」
「だったらぁっ!」
「けど少しくらい労ってくれたって良いじゃない!仕方がないとか、それでも私は味方だよとか、それなのに最低だの言って引っぱたいて、ちょっと酷いんじゃない!?」
「それは巴ちゃんの事を想って。」
「いいや!想ってない!てか全然分かってもくれない。」
「……こっちだって。」
「アンタ変わったよ、いや変わりすぎだわ、出会ってからずっと日に日にアンタの成長を自分の事のように喜んできた、それなのに今はこーんな一端に人にここまで口撃するまでになるなんて…。」
「…巴ちゃん。」
「やめてくれる気安くそう呼ぶの…。」
「え?」
「今日から私とアンタもう縁を切るわ、もう親友でも何でもない。」
「何を…だってあの時何があっても。」
「女の友情は儚いっていうけど本当ね。」
「でもっ!」
「あぁーあ!こーんな事ならあの日アンタなんかに店で声なんか掛けなきゃ良かった、ずっと臆病で孤独に学校生活を送ってりゃ良かったのよ。」
「そんな…。」
「アンタなんか所詮ただの友達だったのよ、ただの!ちょっと楽しそうだったから付き合ってやっただけよ、アンタの事は何があっても味方だとか言ったかもしれないけどあんなのただの気まぐれよ、本気になんて思う訳ないでしょ!」
「っ……。」
「本当に友達ならここは私の肩を持つべきよ、それなのに…。」
「何よ!そんなの自分の都合でしょ!……いいよ!こっちこそ絶交よ!前からイラついてたんだよね、そうやって自分勝手でちょっと自分の思い通りにならないとそうやって子供みたいにワーワー吠えて!」
「ふんっ!泣き虫ドジ女がよく言うよ!…じゃ私行くわ、これ以上赤の他人と話し合ってもキリがないもんね!」
「えーえーどうぞどうぞ!」
「じゃね、精々あの薄汚いストーカー野郎と宜しくやってな!」
……もう滅茶苦茶だ、これでもう私には隼人しか、いなくなったのか。