第9話『エール交換』-2
……。
「フゥレェーッ、フゥレェーッ、い、ち、く、みぃっ」
「声が小さぁい。 そんな声で誰が励まされるってんだオラァ」
スパァン。 平手が肌をうつ乾いた響き。
「ふっ、ふ、フゥレェーッ、フゥレェーッ、い、ち、く、みぃっ!」
「チツマンコ隠してんじゃねぇーっ、ココは奥の奥までおっぴろげんだよオルァ」
ピチィッ。 粘膜を介した、やや湿り気が混じった音。
応援団部室前で応援の練習をする、新しい顔が3名。 Cグループ1組から3組まで、各クラスを代表して集まった体育委員だ。 『組対抗』で行う体育祭では、彼女たちが応援エールを交換する。 といっても、体育祭本番では地域の来賓も大勢くるし、恥ずかしい応援合戦は披露できない。 だだっぴろいグラウンドの隅々まで届く立派なエール交換をするためにはそれなりの訓練がいるわけで、各クラス体育委員は応援團長の合格が貰えるまで、毎放課後応援団に通うのが通例になっている。 それぞれの新人にBグループ生団員がつき、マンツーマンの応援指導だ。
「腰が高い、腰が高ぁい。 何遍言わつもりだコラァ」
「も、申し訳ありませんっ!」
「だぁから、返事は『牝忍(めす)』だっつってんだろ」
スパァン。 胸に弾けるスナップが効いた乳ビンタ。
「め、牝忍ッ!」
「背中を後ろにそらしてぇ、腕は真上でぇ……ほらっ、手本をしっかり見んかい」
「牝忍ぅッ!」
乳房に『61番』と大書された少女が叫ぶ。 Cグループ61番、1組の体育委員だ。 少女の隣ではCグループ応援団員が無言で『エール姿勢』をとっている。
『エール姿勢』――手と頭を地面につけないままでブリッジし、お腹を真上に向け、限界まで身体を平べったくする。 その為には重心を爪先にもってゆくことになり、腕や手はなるべく前にだしてバランスをとるのだが、慣れないうちは倒れないだけで精一杯という厳しい姿勢だ。 その体勢のまま膣を応援対象に向け、腕を身体の上で振ることで拍子をとり、全力大声で応援する。
『牝らしく応援する』以上、視線を集めるべきは女の持ち物が相応しい。 ゆえに股の付根のみを観客全員に晒し、上半身は見せないための工夫が『エール姿勢』に詰まっている。 その上で太腿を左右に広げ、更に腰を落として尻たぶを開き、肛門まで衆目に晒すことが出来れば理想形といえるのだが、そこまで厳しく体勢をコントロールするには生半な練習では覚束ない。 ただ、少なくとも観客から膣は見えても乳首が見えないレベルまで背中を反らせられるようには、即席の応援要員であっても練習する。
「ふうっ、ううぅ……!」
「いいぞいいぞぉ。 その調子でけっぱれぇ」
「ふっん……ふぅぅ〜〜ッ!」
どんどん背中を反らせる61番。 まるで背中を反らしながらバーを潜る『リンボーダンス』だ。 前進しなくていい分だけリンボーダンスより楽かもしれないが、体を低くする目標はリンボーダンスのバーとは比べ物にならない。 リンボーダンスが1メートルそこらな一方、『エール姿勢』が要求する高さは5、60センチといった所だ。
「そのまま股をひらぁく。 チツマンコ閉じてるうちは、いつまで経っても応援なんざ届かんぞぉ」
「ひぃ……ひぃぃ……」
61番の脚はガクガク震えていた。 無茶な体勢を長時間とらされ、普段使わない筋肉が痙攣する。 何とか足を広げようとしても、バランスが崩れないように現状維持が精一杯。 膣口が僅かによじれておちょぼ口になるだけで、到底膣の奥まで晒す穴には至らない。 それどころかお尻と踵がくっつきかけ、今にも尻もちをつきそうだ。
「オラァ、ケツに力いれんかい。 ケツマンコで身体支えんだっつってんだろがぁ」
「めっ、牝忍……ッ!」
「倒れんなよぉ……倒れたら最初っからやり直しだぞ」
「牝忍ッ!」
Bグループ応援団員が見下ろす中、姿勢を維持するCグループ生。 よくよく見れば足だけでなく全身をプルプル震わせていて、いかにも限界に耐えている様子が健気でもある。
61番が懸命に平べったく股間を晒す隣では、3組の体育委員105番がひたすら声を張りあげていた。
「このみっともない肉は何だ」
バッシィッ。 箍を外してささくれだった竹刀、赤味を帯びたお尻に叩きつけられる。
「けっ、ケツマンコですぅ!」
「聞こえねぇーっ」
ビシィッ。 返事から間髪入れず、力を込めて竹刀を振るうBグループ応援団員。
「けっ、け、ケツマァンコでぇすッ!」
「ボソボソ呟いてんじゃねぇぞ。 オテント様に聞こえるようにハキハキせんかぁいッ」
ビッシィッ。 振りかぶった竹刀が、三度尻に炸裂する。