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海外赴任
【フェチ/マニア 官能小説】

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家政婦との小旅行-33

陽光に照らされた侑香は残酷な事実を告げて立ち竦むエレナを見下ろしていた。エレナの頬から留めどない涙が頬をつたって流れ落ちていた。

「ユーカ。あなた、問題ないの?」

涙声のスペイン語がユーカに向けて問いかけていた。

「これが私達の仕事。違うの?」
「その通り。だけど残酷よ」
「あなたのボスは大金を払ってる。顧客の要望に応えるのが私達の役割。違うの?」

涙を流すエレナは言葉を失って侑香を見上げて立ち尽くしてしまっていた。

「ユーカ、あなた何をしたのか分かってるの?」
「アスカ、良いんだ。全て事実だ」

アスカは怒っていた。強い視線で侑香を睨むアスカを宥め、エレナの姿を焼き付けていた。今後の事はエレナ次第だ。エレナが何処まで受け入れることが出来るか、其処に全てを委ねることしか出来ない状況だ。何も言えずにエレナの言葉を待っていた。

「アスカ、あなたもなの?」
「その通り。エレナの組織に私も所属している。ユーカも同じ。私たちは同じ組織よ」

天を仰いだエレナは、ゆっくりと僕を振り返っていた。長い睫毛に水玉の涙を載せて、真意を確かめるように首を傾げて問いかけてきた。

「ボス、あなたは何者なの?」

遂にその時が来た事を理解していた。話さない訳にいかない状況に追い詰められた僕は、瞳の力を抜いて話し始めようとした時だった。

「エレナ、ダメよ」

アスカだ。アスカがこの状況の責任を感じた発言だった。スペイン語でまくし立てる説得は会話を理解できる範囲を超えていた。エレナとアスカ、それに、ユーカが激しくスペイン語で会話を続けていた。

茫然と眺める事しか出来ない僕は三人で交わされるスペイン語に諦めて、白いソファーに腰を下ろして天窓を見上げていた。

スペイン語で言い合う三人は、アスカを囲む背丈の高い二人が語気を強めて責めている響きだった。アスカ、もう良い。そう言って事態の収束を図ったが完全に無視されていた。エレナは両腕を上げて肩をすくめアスカに問いかけていた。侑香は20歳の情熱で何かを確かめているようだった。囲まれたアスカは、強い口調で二人を説得している姿だった。必死に説得を続けるアスカは、懸命に僕を庇っていた。僅かに理解できるスペイン語は、ボスは絶対的な存在だと聞こえていた。

アスカが守るプロ行為の集大成だった。
凄いプロ集団を前にソファーで眺めた僕は最高潮の幸せを感じていた。このひと時を夢見て此処まで頑張って来たのはある。
僕は独りで涙を流してしまっていた。
溢れる涙が止まらなかった。
いつ以来だろう。涙を流す行為は孤独に苛まれた嗚咽に変わり、留めどなく涙が溢れ落ちていた。涙腺から溢れる涙は、三人の姿を霞ませて強い目力でも敵うことが出来なかった。涙を拭えずに茫然と涙を流してしまっていた。

「ボス?」

エレナの声だった。21歳の美しいエレナの声が聞こえていた。涙腺の涙がエレナの姿を捉えられなかった。溢れる涙が鼻水になって溢れてしまっていた。

「ボス、エレナよ」

いつもの様にエレナが僕を強く抱き締めてくれていた。エレナ、エレナなのか?嗚咽の声で片言のスペイン語で話す事で一杯だった。

「やだ、エレナの身体忘れたの?」

エレナは優しく包み込む様に抱き締めて、ごめんねボス。と涙を拭ってデカいボインに顔を埋めて一緒に泣いてくれていた。


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