家政婦との小旅行-20
侑香はドイツ製のボディソープのチューブを開けて手の平で泡を立てて綺麗に体を洗ってくれていた。足の指先に細い指を絡め、立ち上がった背面に回って泡立てた両手で背中をなぞって綺麗に洗いあげてくれていた。
「はい。おしまい。あとは頭だから座ってね」
言われるまま透明の椅子に座った僕は、目の前で揺れる若いおっぱいを見つめながら細い指先で指圧して頭皮を洗う侑香に全てを任せてあげていた。
「両手を出して」
薄いピンク色のフェイスクリームを載せた侑香は、顔は自分で洗ってね。と笑って湯船の温度を確かめに遠くのバスタブに向かって歩き出していた。
広いバスタブに浸かる侑香は、身体を労わる様に長い腕と両脚を伸ばして薬膳湯の香りに瞳を閉じて寛いでいた。
「なぁ、俺も入るよ」
「どーぞー」
若い声だった。
瞳を閉じる侑香に微笑み、肩を並べる様にバスタブに浸かって大きく息を吸い込んでいた。最高級のもてなしに満足した僕の心は、満たされた幸せの深呼吸で全ての力を抜いていた。真横で肩を並べる侑香の長い脚線に視線を向け美しい若い生脚に心が解されていた。
「歯、凄いびっくりした、流石の私も予想できなかったよ。流石ですね」
「まぁな、俺も驚いたよ。自然の歯だった」
「自然の歯?は?ちょっと面白いんですけど」
侑香は可愛らしい笑顔で僕を見上げていた。若い20歳の笑顔だった。衝動的に唇を奪って小顔を引き寄せていた。強引に舌を入れて若い唾液を夢中に飲み込んでしまっていた。突然のキスに侑香は若い喘ぎで温かい吐息を漏らしていた。
舌を吸われて感じる侑香は、湯船で揃えた長い脚を横に傾け身体を預けるように左手を僕の右肩に置いていた。柔らかいおっぱいが胸に触れて細い片脚が僕の足を挟むように折り上げられていた。
「びっくりした。突然すぎですよ」
「可愛いかった。素敵すぎるのが悪い」
「面白い人。変な褒め方」
左肩に小顔を寄せられた侑香は、火照る笑顔で僕を見上げていた。細い指先で湯船の胸板を優しく触りながら侑香は語り始めていた。
「本当は普通の女の子になりたかったんだ」
「まぁ、普通に見えるよ。普通だろ」
「違うの。日本人なら日本に住みたいし、ロシア人ならロシアで暮らしたかったの」
「暮らせただろ」
「今は無理。失敗しちゃった」
侑香の独白だった。誰かに聞いて貰いたい年頃なんだろう。湯船から左手を出して天窓の光に綺麗な指先を照らして語るように話を続けていた。
「わたしね13歳の時、芸能事務所にスカウトされたんだ。そこからなの」
「芸能事務所にスカウトされるのは分かる。世間で暮らすには不自由な可愛いらしさだ。可愛いのにも不便がある」
「ありがと。優しいのね」
「芸能事務所にいたら失敗じゃないだろ」
「そうなの。なのに、普通の暮らしがしたくて飛び出しちゃったの。色々あって気が付いたら此処に辿り着いたのよ。わたしバカみたい」
泣くのか?侑香を見下ろして真意を確かめてみた。侑香は親指の爪を人差し指で器用に磨いて微笑んでいるようだった。
「本当に色々あったの」
「まぁ。そうだろうな」
侑香は身体を元に戻して、大人の身体を大きく伸ばして天窓に顔を向けて瞳を細めていた。
「ねぇ、貴方はどうしてそこまで来れたの?」
若い質問だった。アスカのように遇らうことが憚れる質問だと理解していた。侑香はまだ若い。20歳の女性はこれからがある。天窓を見上げる侑香に微笑んで優しく諭すように話してあげていた。
「此処までくるのには侑香以上に色々ある」
「本当?」
「本当だ。高額なキャッシュを常に用意することは簡単な事ではない。侑香、お金って分かるか?」
「お金?元々資産家とか?」
「ちょっと違う。お金があっても此処まで来れない」
「分かんない」
湯船に浸かる僕は、純粋に見つめる侑香に話すべきか躊躇って大きな深呼吸で息を整えていた。
「お金。ヒントは此処だよ」
「全然分かんないんですけど」
「そうだよな。そりゃそうか」
僕は笑ってしまっていた。侑香は、ねぇ教えてよと湯船の腕を引っ張って僕を見上げていた。
「上がろうか」
「えぇぇ、ずるーい」
バスタブから降りた僕は湯船で見上げる侑香に少しだけ教えて脱衣室に向かっていた。侑香はその言葉の意味に首を傾げて遠ざかる僕に、待ってよおと若い声で問いかけていた。
湯船から上がる柔らかいお湯の音を響かせた侑香は、タイルに置いた高級ヒールを取りに綺麗な背中を向けて走っているようだった。
「おい、転ぶなよ」
「ねぇ、待ってよ、待ってったら」
脱衣室の扉を手にした僕は、若い侑香の声に心が踊って笑ってしまっていた。