彩花の部屋で-3
彩花は必死に抵抗していた。
羞恥と屈辱、どうしようもない無力感、カボチャの怪人への恐怖と嫌悪、どちらかを受け入れて楽になりたいという思い──これらの感情が入り交じり、せめぎ合っていた。
「さあ、そろそろ決めろ。トリック・オア・パンティ?」
「お願い! 許して……!」
「トリック・オア・パンティ?」
「だから……っ!」
彩花が屈するのは時間の問題のようだった。
現に床にうずくまっているほのかの手はスカートの方に移動していた。
「ほう、パンティを選んだか?」
「違うわよ!」
「じゃあ、悪戯か?」
「それもイヤ……!」
「パンティが汚くないのなら渡しても恥ずかしくないだろう? わかった! ビッチなお前の本音は、やはり悪戯なんだろう? だが、それを言えなくて困ってる」
「違う……!」
だが、原田の最後の言葉は彩花の心を動かしたようだった。
「……わかったわ! そんなことを言うのならショーツをあげる……! あたしのショーツはきれいだから別に恥ずかしくないし……!」
こう言うと、彩花はよろけながら立ち上がり、スカートの中に手を入れた。
そして、スルスルとピンクの布地を下ろし始めた。
やった! やったぞ!
原田は心の中で快哉を叫んだ。
自分のことをキモいとバカにし、スカートの裾を書類で隠した女が目の前でパンティを脱ぎ始めたのだ。
ハロウィンの怪人の魔法、恐るべしである。
「はい! これ!」
彩花はナイロン製のピンクの布地を原田に手渡した。
フリルの付いた可愛らしいピンクのパンティだった。
脱ぎたてなので、まだ温もりが残っていて、甘い牝臭も感じられる。
こ、これが高本彩花のナマパンティなのか?
感動に打ち震えて原田はパンティの匂いを嗅ぐことにした。
カボチャのマスクの鼻の部分は三角形の穴が開いているので、近づければ嗅ぐことができる。
「ああ……っ!」
あまりの猛臭に原田は声をあげてしまった。
汗と小便臭、ウンコの臭いが入り交じったとんでもない臭いだ。
洗濯洗剤の匂いはわずかしかしない。
「ヘ、ヘンタイ……!!」
「ヘンタイだと? 君みたいな可愛い子のナマパンティを手に入れたら、オトコはみんな同じことをするぜ。それは、どんなイケメンだって同じだ」
「そんなこと、どうでもいいから、さっさと帰りなさいよ!」
彩花が急に強気になった。
パンティを渡したことで、どうやら二者選択の魔法も解けつつあるようだ。
その時、原田はパンティに面白いものを見つけた。
ピンクの布地に付着している茶色の線──ウンコの残滓が残っていたのだ。
さらによく見れば、股布の部分には黄色い小便の痕もくっきり記されている。
原田は笑った。
「どこが、あたしのショーツはきれいなんだ? ションベンだけでなく、ウンコも付いてとんでもなく汚れてるじゃないか? 道理でメチャクチャ臭いわけだ!」
「!!」
「これは家に帰るのが楽しみだ。しっかり君の汚れパンティを楽しませてもらうよ」
「いやっ、恥ずかしい……!」
彩花は顔を真っ赤にすると、原田の手から下着を奪おうとした。
「やっぱり返して! あなたみたいなヘンタイに渡すわけにはいかない!」
「あ〜、楽しみだな〜! 君のパンティを思う存分クンクン嗅いで、ペロペロ舐めて、生地が破れるまで味合わせてもらうよ! これをオカズに今夜は10回くらいイケるかもしれないな」
「やめて! お願いだから返して!」
彩花は必死に奪い返そうとするが、マスクの力で超人的な能力を身につけている原田はひらりとひらりとかわしていく。
その時だった。
「きゃっ!!」
彩花が足を滑らせてベッドの角に頭を打ちつけた。