終わらないハロウィンパーティー 〜狼は甘いものがお好き〜-5
「──はぁっ……はぁっ」
ぐったりと脱力したわたしの腰を左手で掴み挿入したままの彼は、サイドテーブルに右手を伸ばし、ペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干した。
カーテンの隙間に白み始めた空が見える。
わたしたちは繋がったまま、乱れた呼吸を整えるように何度も深呼吸をした。
──こんなことは、初めてだった。
ほとんど話したこともない相手と肌を合わせてしまった。
彼はわたしを知っていたけれど、わたしのほうはそうではなかった。
それなのに、こんなことになってしまった。
ふだんのわたしには『ありえないこと』だ。こんなことは……。
事の始まりは、今から数時間まえのこと。
わたしは、あるバンドのハロウィンイベントを楽しみに、地下のライブハウスを訪れていた──。
唸るベース。すすり泣くようなギター。猛々しいドラム。そして、甘くささやくようなヴォーカルの歌声。
身体が勝手にビートを刻む。爆音が心地よい。
「ありがとうございました!」
笑顔のヴォーカルが頭を下げる。斜め後ろにいるギターの男の子に目がいった。血糊のついた白衣を着ている男の子──わたしと同い年くらい?
襟足、耳周りをスッキリさせたツーブロックのマッシュベースヘアに、細めのアーモンド型の目。湖のように深く澄んだ瞳をしている。
なんとなく、見覚えがあるような……。
そう思っている間にメンバーたちは捌けていき、次のバンドのための用意が始まる。今日のこの対バンの、メインのバンドの用意だ。
ライブハウスの後方にいたひとたちも前へ前へと詰め寄せる。高揚感。
今日のライブはドレスコードが決まっていた。『ハロウィンパーティー』を盛り上げるためのコスチューム。
ナースやヴァンパイア、アリスにシンデレラ……みんなそれぞれに『仮装』をしてきている。もちろん、わたしも……。
音出しが始まった。
どのバンドも仮装をしてハロウィンらしい曲を演奏し、場を盛り上げる。