ストライク-1
「長かったね、フウカちゃん。」
「うん…。」
「やっとこうなれた。」
「うん…。」
「もっと強引にいけばよかったのかなあ?」
「ピッチングみたいに?」
「そうそう、それでよく打たれて、って、おい。」
「うふっ。半分はキャッチャーの私のリードのせいだから。」
「つまり、半分はやっぱり私なんだ。」
「んー、まー、そう、かな。」
「なんだとー。」
私はフウカちゃんに馬乗りになった。
「あは、やめてよ、重いよ。」
「誰が重いってぇ?」
体を伸ばし、全身でぴったりと体を重ねた。
「…ほら、重い…って。」
フウカの方から唇を求めてきた。
手のひらでフウカの胸の膨らみを何度も変形させ、先端を軽く噛んだ。
「んん…。」
「感じるの?感じるのね?」
「…セリナにならどこに何をされても感じるみたい。」
「マネすんな、コラ。」
「え、そうだっけ。」
「罰として、右膝を自分で抱え上げなさい。」
「なにそれ?」
「いいから。」
「あ、うん…。」
フウカは私に言われた通り、自分の右膝を両手で抱え上げた。膝は軽く胸に付いた。トレーニングでストレッチをやっている分、私たちの体は柔軟だ。
「そのまま、そのまま、ね。」
「なにするの?」
「いいからいいから。」
私はフウカの下腹部まで這い下りた。
「え、ちょ、まさか…」
「はい、動かないの。」
「う、うん。」
少し闇に慣れた目に、フウカのそこが微かに見える。彼女はもちろんそのことに気づいていて、モゾモゾしている。
私は見つめるだけで動かない。
「何も…しないの?」
フウカの方から訊いてきた。
「するよ。でも。」
「でも?」
「リードしてよ。キャッチャーでしょ。」
「リード?」
「どこにどんな球を投げる、みたいにさ、フウカのどこに何をすればいいのか、をだよ。」
「そんなの…恥ずかしいよ。して欲しい事を自分で言うなんて。」
ふぅ、と私はひとつ息をついた。
「初めて二人でバッテリー組んだ時の事覚えてる?」
フウカが苦笑いする気配が伝わってきた。
「忘れないよ。二人ともガチガチに緊張してボロボロ。」
「だったよね。」
「うん。」
「それじゃあ、初めて私にサイン出す時はどんな気持ちだった?」
「うーん、すごく恥ずかしかったよ。だって、私が決めたボールをセリナちゃんに投げさせるわけでしょ?なんでそんな球?なんて思われたらどうしよう、って。」
「でも、バッテリーを組んでいくからには、それを積み重ねていくしかなかった。よね?」
「うん。」
「そして今ではフウカちゃんは自信を持って私にサインを送れるし、私は信じて投げられる。」
「あ…。」
「私たち、始まったんだよ、今日から。始めるんだよ、今日から。」
「そっか!」
「だから、ね。」
「うん。」
スー、ハー。二人は揃って深呼吸した。
「さあ、最初の球はどうしますか?」
「そうね、じゃあ、こういうのはどうかな?私の…相方、セリナ。」
「うん、その球、全力で投げるよ、私の…相方、フウカ。」
「あ、それ…ストライク。」