ボールは投げられた-1
「ちょ、ちょっと。」
投球練習を始めてすぐにキャッチャーのフウカちゃんが私の所に走って来て耳元で囁いた。
「ね、そのパンティ…」
「あ、バレた?間違えて穿いて来ちゃったんだよ。」
「ダメじゃない、線が浮かんじゃってるよ。ユニフォーム用のに穿き替えておいでよ。」
「いいよ。誰も気付いてないみたいだし。フウカちゃんだけだよ、気付いたの。」
「そ、そうかなあ。だったらいい…のかなあ。」
「フウカちゃん、私のお尻ジロジロ見てるから気が付いたんじゃないの?」
「…。」
フウカちゃんは一瞬唇の右端をピクっとさせ、そのまま静止した。
「なんてねー!あははっ。」
グローブでポンと頭を叩いた。
彼女は何か気の利いた返しをしようと試みている様に見えたが、あきらめて歩いて戻っていった。
私が線の浮きやすいこのパンティにしたのは本当は間違えたのではない。
フウカ、私はもうボールを投げたよ。