第二話:ママの元婚約者が現れた-4
この日は、明日から始まる中間試験に備えて、学校は短縮授業で、午前中で授業は終わりました。私もさすがに勉強しなくてはと真っ直ぐ家に帰ると、私の住むマンションの前を、2メートル以上はありそうな、プロレスラーのような大きなツルツル頭の男の人と、黒いタキシードを着た、150cmぐらいの小柄なひ弱そうな男性が、辺りをキョロキョロしながらウロウロしていました。何か二人が不審者っぽく見えたので、私は無視して通り過ぎようとしていると、小柄な男性が私に慌てて近付いて来ました。
「アァ、そこの君、サキュバスが化けて居る人間が、この辺りに住んで居る筈何だが、君、知らないかね?さっきから道行く者に尋ねても、私の事を胡散臭そうに見て、素通りしていく失礼な輩が多くて困って居るんだが?」
それは、そうでしょう・・・
いきなり大人の男性が、サキュバス探している何て尋ねても、ちょっと頭のおかしい人だと思われると思います。私以外・・・
私は、そんなの家のママ以外要る筈無いじゃないと、思わず心の中で突っ込み、私は、この人はママの知り合いなのかと、ジィと二人を改めて見てみました。二人のやり取りを見る限り、小柄な人の方が、大きな人のご主人様なようで、大きな身体を窮屈そうに屈めて、ペコペコして居ました。私は、探る様に小柄な男性に話し掛け、
「あのぅ、そのサキュバスって人と、どういう関係何ですか?」
「ン!?私か?私は、そのサキュバスのフィアンセだ!」
小柄な人が、ママのフィアンセだって言ったから、私は昨日のママの言葉を思い出して、つい失礼な事を口走っちゃいました・・・
「エェェェ!?あの早漏の?」
「早漏言うなぁぁぁぁぁ!」
「ブヒィィィィィヒィィィィヒ」
「笑うなぁ!」
私が早漏と言うと、小柄な男性は顔を真っ赤にして否定し、大柄な男性は、口を押さえて笑っていました。小柄な男性は、大きな男性の右足を蹴って文句を言って居ましたが、何かを思い出したように私を振り返り、
「ン!?貴様、何故私の事を?」
「エェェと・・・多分、あなたがお探しの人から・・・」
「何ぃぃ!?マヤはやっぱり此処に居るんだなぁ?直ぐ案内してくれ!」
(やっぱり家のママだよねぇ)
私は、連れて行くべきか悩みましたが、マンション前で何かしでかされても不味いと考え、渋々ながら家に案内する事にしました。
「オーク、お前はこの辺で待って居ろ!」
「ウガッ!」
(エッ!?オーク?どこかで聞いた事あるような?)
私が首を傾げて居ると、小柄な人に命令された大きな人は、花壇に腰掛け居眠りを始めました。私は、ママに申し訳ないなと思いながら、小柄な人を家の前に案内し、チャイムを鳴らしました。玄関のドアが開き、ママが顔を出すと、小柄な男性は見る見る表情を輝かせ、
「マヤァァァァ!僕だよ、君の愛しきフィアンセ、ニックだよ!!」
ニックさんは、懐かしそうに両手を広げて、ママとの再会を喜んでいましたが、当のママは、明らかに嫌そうな表情をしていました。
「ちょっとニック、家の前で変な事言うの止めてよねぇ?大体、あなたとの婚約なら、とっくに破棄したでしょう?」
「ハハハハ、マヤは相変わらず冗談が好きだねぇ?アッ、君、君はもう帰っていいよ?」
「ハァ!?ここ、私の家何ですけどぉ?」
私は少しムッとしながら、ニックさんに話すと、ニックさんは何を勘違いしたのか、
「エッ!?アァ、そうか、マヤの召使いか?」
「「違うわよ!」」
おじさんの勘違いに、思わず私とママが同時に否定しました。おじさんは、私の顔を見ながら首を傾げ、
「ハァ!?マヤの召使いの子じゃないのかい?」
「この子は・・・私の娘なの!私、人間の男性と結婚して子供も居るの!!」
ママも少し怒ったように、人間のパパと結婚して、私がその娘である事を告げたものの、ニックさんって物分かりが悪いのかなぁ、ママの言った事を、まだ冗談だと思っているらしくて、
「ハハハハ、娘!?マヤ、それは笑えない冗談だよ?」
「冗談じゃないし・・・それより、わざわざ人間界に何しに来たのよ?」
「君を迎えに来たんじゃないか!」
「だから、私は結婚して居るの!分かったら帰ってくれる?」
ママは、説明するのも疲れた表情を浮かべました。私も、ママがこの人から逃げ出した理由が、少し分かった気がします。私がママと同じ立場だったとしても、同じ事をしたかも知れません。でもニックさん、そんなママの説明も無視してマイぺースでした・・・