第八話:母の変貌-4
「まあ、お前の母ちゃんだけじゃなくて、俺のおふくろも含めて、あの授業参観に来てた母親達は、中野の母ちゃん以外、みんな鬼塚先輩のグループの言いなりだぜ?」
「エッ!?」
「何なら、他の母親達どうなってるか知りたいか?」
「う、うん・・・」
「まあ、あのトドみたいな武藤の母ちゃんは、デブ専の和先輩と翔先輩専用何だけど、武藤の母ちゃん、家出して翔先輩の所に入り浸ってるようだぜ」
「ほ、本当かよ!?」
「ああ・・・それで、あの教育ママっぽい佐藤の母ちゃんだけど・・・今じゃ毎日のように夕方近くに旧校舎に顔出して、三年の先輩と誰構わずエッチしてるぜ」
「あの真面目そうな人がなぁ・・・」
「ああ、真面目だったから、エッチに目覚めて嵌ったのかもなぁ・・・佐藤の母ちゃんも、何れ家庭捨てるのは目に見えてるな」
「そ、そんなになっちゃうのか?」
私はそう言いながらも、自分の母もこの短期間であんな変貌をするなら、あり得ない事じゃないと納得しました。
「で、俺が童貞卒業した黒岩の母ちゃん・・・お前の母ちゃんと一緒に、鬼塚先輩の所に入り浸ってるぜ」
「ウッ・・・」
私の母の話題が出た事で、一瞬言葉に詰まりましたが、健二は尚も話を続け、
「まあ、お前の母ちゃんは鬼塚先輩が一人で相手してるけどさ、黒岩の母ちゃんは、他の先輩達相手にしてる他に、鬼塚先輩の父親が裏で経営してる風俗でも働いてるそうだぜ」
「・・・ふ、風俗かよ?」
「お前、知ってた!?最近黒岩学校来てないじゃん?」
「そ、そう言えば・・・」
「あいつ、母親が男遊びしてるの知って、母親に愛想尽かし、学校辞めて住み込みでどっか働きに行くって事で、今仕事探しで休んでるってよ」
「あいつの所、母子家庭だっけ?」
「同棲してた男は居たんだけど、追い出したんだってよ」
「そ、そう何だ!?」
私は正直、黒岩の事を凄いと思いました。私は、母に愛想を尽かす何て、少なくても今では全く考えられないのに、黒岩は更に自立しようとしているのですから、健二は、一呼吸置くと、照れくさそうな表情で話しだし、
「で、俺のおふくろだけど・・・恥ずかしい話、あの屑野郎の安藤に寝取られた・・・笑っちまうだろう?」
「あ、安藤に!?」
「言ってなかったけど、親父と離婚して安藤と暮らしてるよ」
「エェェェ!?」
「お前の家も他人事じゃねぇぞ?鬼塚先輩、お前の母ちゃんに飽きて来たみたいで、お前の母ちゃん、鬼塚先輩引き留めようと、髪染めたりしてさ・・・友人のお前だから忠告しとくけど、あのままじゃお前の母ちゃん・・・風俗行きだぞ?今の内にどうにかした方が良いんじゃねぇか?」
私は、健二の忠告を呆然としながら聞いていました。あの授業参観に参加していた母親達は、皆家庭崩壊したり、危機に陥ったりしていたとは、今の今まで知りませんでした。中野の家も、私のせいで崩壊してもおかしくないと知り恐怖しました・・・
放課後・・・
金も無く、健二からの忠告もあって、私は真っ直ぐ家に帰りました。私の誕生日だから、母は必ず帰って来てくれると信じて、ですがまだ母は帰っては居ませんでした。
(来る!母さんは絶対帰って来る!!)
私は母を信じ、腹ペコの状態を我慢し、母の帰りを待ち続けました。19時、20時、21時になっても母は帰って来ません。
(大丈夫、ケーキ屋が終わったって、コンビニがあるじゃないか)
私の信じる心も空しく、22時、23時、23時半になっても母は帰って来ませんでした。
(母さん・・・・・どうして!?)
23時55分・・・
私の16歳の誕生日のこの日、私はようやく初めて食事を取りました。私の誕生日の終わりを告げる、午前0時の時報を聞きながら啜るカップラーメンの味を、私は生涯忘れないでしょう・・・