色-1
安達さんは不機嫌な顔をして私との距離を3歩で縮めた。
少しだけたじろいだ私の両脇に手を入れて
軽々と私を抱き上げる。
「安達さん・・・?」
目の前に安達さんの顔があって
180センチの安達さんとほぼ同じ高さになった。
安達さんは私を抱き上げたまま、同じ目線になった私にそっとキスをした。
「この景色が見たかったんだろう?」
「え?」
「高い靴を履けば、大人なのか?だったらそれより高く抱き上げてやるよ」
「ちがっ」
小さく息を吐きだして、
そっと私を地面におろす。
そして私の髪をくしゃっとして、苦笑いする。
「急がなくていいんだよ」
「・・・・」
「急いで大人になんかならなくていいんだ。
大人の恋も、オフィスラブも、俺がゆっくり時間をかけて教えてやる」
「あだちさ・・・」
安達さんは私を胸に抱きしめた。
「俺と同じ高さの景色が見えるまで俺が教えてやる」
「・・・・」
「ヒールなんかでごまかさなくていい。
自分に似合った好きな服を着ればいい」
なんでも、安達さんにはお見通しなんだね。
「自分をごまかさないで無理しないで
ゆっくり、俺の腕の中で大人になればいい」
「・・・・」
「俺だけが大人になって行く美鈴を眺められるように
俺だけが美鈴の変化が分かるように
俺が、ゆっくり育ててやる」
髪をなでる大きな手が心地よかった。