♥勝手に浮かんでくる男♥-1
ーー松本っ!! 助けに来たぞぉっ!!
ハッと目が覚めれば、電気の消えた自分の部屋。
天窓から差し込む月明かりが、ぼんやり部屋の中を優しく照らしていた。
……夢。
夢、なのだろうか。そっと手を頬に当てれば、指先に熱がジンワリ伝わって来た。
身体が熱いのは、寝苦しい暑い夜のせいなんかじゃない。
ゆっくり身体を起こし、クシャリと前髪を掴む。
ここ最近は、脳内にアイツの顔がやたらとフラッシュバックしてくる。
あたしにおちょくられて、真っ赤になって目を逸らす照れた顔。
あたしにケンカ口調で怒る顔。
そして、何を勘違いしていたのか、助けに来たと叫びながら、天童さんのお店に飛び込んできた、真剣な顔。
全然好きなタイプの男じゃないのに、気がつけば天野くんの事を考えてしまってる自分がいた。
前髪を握っていた手をスルリと胸元へ下ろすと、自分の柔らかな膨らみにあたる。
何であたし、下着姿を見られたくらいであんなに怒っちゃったんだろう。
採寸の時は、ヒロさんが男と知ったばかりで気が動転してたのもあったけど、普段のあたしなら男に下着姿を見られた事くらい、痛くも痒くもないのに。
でも、天野くんと目が合った瞬間、汗が噴き出して来て、急に恥ずかしさが込み上げてきて。
ーーし、下着!?
あの時の天野くん、顔真っ赤にして、めちゃくちゃ動揺してたな……。
胸にあてた手から心臓の鼓動が伝わってくる。
いつもよりも早く脈打つそれ。あの時の天野くんも、あたしの身体を見てこんな風にドキドキしていたのだろうか。
そして、ふと我に返っては頭をプルプル振って、自分を諭す。
何であたしが、いちいち天野くんのことなんか気にしなきゃいけないんだろう。
考えたくもないのに、勝手にあたしの頭の中に入り込んできて、どこまでもウザい男だ。