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痛みキャンディ
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痛みキャンディ-1

初めてあのキャンディを舐めたのはいつだっただろう。
おれには感情がない。
幼児期のトラウマから
笑うこと
泣くこと
怒ること

忘れちゃった。
だから、何も感じられなくなった。
ノッペラボウみたいな自分だ。
医師は言う。
無いのではなくて忘れただけ。
だから思い出せると。

作り物みたいだね。ってよく言われる。
一緒にいてつまらない。と呆れられる。
みんな離れていってしまった。
こんな自分だから仕方ないか。
こんな時に悔しいとか淋しいとか情けないとかっていう気持ちに普通ならなるはずだ。
わからない。
自分がわからない。

ある日、コンビニで
『痛みキャンディ』という飴を買った。

注意書きには
人の痛みがわかります。
成分は舐めた人によって変わります。
賞味期限は貴方次第。
とあった。

試しに一粒舐めてみた。
甘いフルーツの味がした。
店を出て街を彷徨う。
何も感じないのは
やはり感情を忘れちゃったかなだろうか。

捨てられている子犬を見た。
頭をなぜてやった。
胸がツンと痛みだした。
捨てられた犬の瞳が何かを訴えかけた。

捨てられる痛み、必要とされていない孤独。
愛に対する飢え。
伝わってきた。
おれも同じだ。
犬を連れて帰る。
今日からの同居人だ。
名前をつける。
クゥンクゥンと鳴くから、『クゥ』って付けた。
おれはクゥと一緒に忘れちゃった感情をこれから取り返す旅に出ようと思う。
痛みキャンディが教えてくれる、痛みが道標だ。
クゥはガツガツと餌を平らげた。
尻尾を振って走り回る。
こいつとなら、何かが見つかるかもしれない。


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