第七章 姉の白い太腿-1
「チクショー!舐めんなよー!」
二階から怒鳴り声が聞こえる。
「来てるの?」
「あ、お帰り。」
「荒れてるね。」
「いつも通りよ。」
「だね。」
「母さん、出かけなきゃならないのよ。様子見ててやってくれない?」
「いいよ。気をつけてね。」
「ありがとう。行ってきます。」
俺はため息を一つついて二階に上がった。
「姉さん、入るよ。」
部屋に入ったとたんにキ、っと睨まれた。
「なによ、私を笑いに来たの?」
「笑って済ませられる状況には見えないんだけど。」
姉さんは壁際で膝を抱えて座り、涙目で俯いている。
「またされたの?」
「…。」
彼女は自嘲的な笑いを浮かべ、無言で頷いた。
姉さんは高校を出て三年目の春に職場の先輩と結婚した。ハデな女遊びで有名な人だった。それが、何がどうなってか分からないけど、姉さんを選んだ。有頂天になっていた姉さんが最初にドン底に突き落とされたのは、式の三日前だった。
友人の一人が姉さんに囁いたらしい。あの人、前の女とまだ続いてるよ、って。あとで分かった事だけど、その友人も実は…。
姉さんプライドがとんでもなく高い人だから、そのまま結婚を強行したんだけど、その後は周囲が心配した通りの展開になってしまった。というわけで、怒り狂ってしょっちゅう帰ってくる。
「別れてやる!たぶん別れる!別れるんじゃないかな。別れるかも知れない。別れたら私…どうしたらいいのー!うわあーん!」
姉弟だからよく知ってる。勝ち気に見えるけど、実は脆い。支える人が必要なんだ。だからヤバイ男と分かってるのに落とされちゃったんだと思う。じゃ、あの人はなぜ姉さんと結婚したんだろう。
大学の先輩と飲んでてその話になったときこう言われた。そりゃあお前、カモフラージュだろ、いつまでもフラフラしてると思われたら職場での立場が悪くなるからな、出世にも響くし、取引先の信用にも影響出るんじゃないか、と。正直腹が立ったが言い返せなかった。俺も同じことを考えていたから。姉さんは利用されたのだ。
「…アイツったらさ、謝りもしなくなったのよ。舐められたもんだわ。ううっ…。」
俺は隣に座り、黙って肩に手を置いた。
「慰めてくれるの?あの時のように。」
「姉さん、やめようよ、その話は。」
「何よ、私の処女を奪ったくせに。」
封印したはずの記憶が蘇ってくる。
それは姉さんが就職して初めての夏の、蒸し暑い午後だった。今日のように二階から激しい罵り声が聞こえてきて、心配になった俺は様子を見に行った。
そこには、着ていたものを脱ぎ散らし、下着一枚になってベッドに泣き伏している姉さんが居た。その白く艶めかしい太ももの裏側と、ギュッ、っと深くお尻の谷間に食い込んだ下着から、俺は目を離せなくなってしまった。
「なに見てんのよ。」
「あ、ごめん。」
姉さんは泣き腫らした目でしばらく俺を睨んでいたが、突然ペロリ、っと下着を捲ってお尻を出し、足首から抜いた。
「な、なに…?」
「あんたでガマンする。」
「はあ?」
「いいから脱ぎなさい。」
「なに言ってんの、俺たち姉弟だよ。」
「だから何よ。そんなことになってるくせに。」
たしかに。俺は戦闘準備完了だった。
「いや、あの…。」
俺の言うことなんかお構いなしに襲いかかってきた。姉の勢いに押されて抵抗出来ないうち、全部脱がされてしまった。
「まあ、お久しぶり。一緒にお風呂に入ってた頃以来ね。」
摘んでご挨拶された。
「さ、来なさい。あと、これ着けてね。」
姉さんが通勤カバンから出してきた四角くて薄いビニールの包を渡された。
「なんだよ、これ。」
「知ってるでしょ?」
「あ、うん…。」
封を切った。ヌルヌルの袋のような物が出てきた。裏表は書いてあるから分かった。被せて引っ張ったが、ぜんぜん降りて行かない。
「何やってんの。」
姉さんもやってみたが、同じだった。
「ね、これ、なんか巻き込んじゃってない?」
「あー、そうかも。」
一旦戻して今度は巻き込み確認しながらゆっくり降ろしていったが、また引っかかった。
「なによ、もう。」
姉さんとあーだこーだしながら、なんとか根本まで被せ終えた。
「ヤッター!」
「ヤッター!」
俺たち二人はハイタッチで祝福した。
「…。」
「…。」
姉さんは無言でベッドに仰向けになった。俺はその上に覆い被さり、先端を当てがった。体重をかけようとした。
「ちょっと待って。」
「何だよ、やっぱりやめるとかナシだよ?」
「そうじゃなくて。あんた、やり方知ってるの?」
「入れればいいんだろ。」
「強さとか、角度とか、いろいろあるでしょ。」
「知らないよ、初めてなんだから。姉さんが教えてよ。」
「わ、私だって分からないわよ。」
「じゃ、姉弟揃って初めてなんだ。仲がいいんだね、俺たち。」
「そうね、一緒に初体験しちゃうんだもの。」
「ヤッホー!」
「ヤッホー!」
「…。」
「…。」
「ねえ、血の繋がってない姉弟、ってパターンじゃないよね、この場合。」
「まあ…ね。」
「するんだよね、今から。」
「するのよ、今から。」
「やっちゃダメなやつだよね。」
「ええい!いいからサッサと突っ込みなさい!」
姉さんは両手両足で俺の腰を抱え込んでガッ、と強引に引き寄せた。