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《夏休みは始まった》
【鬼畜 官能小説】

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〈戻れない夏〉-7


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「ぷふ〜…気持ち良かったあ〜……」

「こりゃあ明日の朝も入るしかないね」

「あのさ、夕食の後って入れないのかな?」

「夜は蚊とか出るんじゃない?刺されたら嫌だから朝まで待とうよ」


頬を桜色に染めた四人は浴衣姿でリラックスした時間を過ごしていた。
順番は間違えたが身体はピカピカに光るくらい洗ったし、軽い睡魔に襲われるくらいにポカポカと温まっている。


『失礼します』


一声あった後、襖はスッと開いた。
そこに座っていたのは先程の女将で、丸いお盆の上には涼しげなガラスの器によそられた“かき氷”が置かれていた。


『この旅館の自慢のかき氷でございます。江戸時代からある氷室で保存していた氷を削りました。小倉は契約農家から送られてくる小豆を使い、これまた契約牧場の乳牛から搾乳して作った練乳を……』

「キャー!冷た〜い。んふッ…幸せぇ〜」

「真夏ったら撮らないで食べちゃうんだから。あ〜あ、勿体ない」


火照った身体で食べる冷たいかき氷は絶品の一言に尽きる。

ネットには書かれていなかった“おもてなし”に四人はとても感激し、これから招かれる夕食への期待感を高まらせずにはいられなくなっていた。


「このかき氷って、いつでも食べられるんですか?」

『いえいえ、初夏の今だけの期間限定でございます。あまり暑くなりますと、涼しい氷室とは言ってもさすがに……』

「じゃあ私達はラッキーってコトね?やっぱり日頃の行いが良いから神様が見てくれてたのよ」

「ま〜た真夏ったら大袈裟なんだから。ほら、顎に練乳付いてる」


女将は仲良く笑い会う四人組を嬉しそうに見ていた。
こんな山奥の旅館まで遥々訪ねてきてくれて、かき氷一つでここまで喜んでくれるのだから。


『温泉は夜の九時までご利用頂けますよ?もしタオルが足りなくなるようでしたら、お手数ですが内線でフロントまでお知らせをお願いいたします』


そう言いながら女将は器を下げる。
再び部屋は四人だけの空間となっていた。


「ごめんね麻衣。麻衣が選んだこの旅館に反対なんかしちゃって……」


小旅行を計画した当初、麻衣が選んだこの旅館に奈々未は異議を唱えていた。

旅行ガイドブックには一切載らず、ネットの中でしか探せない胡散臭さに違和感を覚えたからだ。
それに、もっと綺麗で利便性に富む旅館があるのだし、こんな不便で〈好き者〉しか訪れないような旅館を選ぶ理由が解らなかったのだ。

だが、実際に来てみたらどうだ。

まるでアニメの舞台のような古い旅館自体がとても魅力的であり、景色も温泉もさりげないお持て成しも素晴らしく感じられた。




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