♠刺激的な女♠-5
◇
「う……」
うっすら目を開ければ眩しすぎるシーリングライト。
反射的にしかめっ面になって視界がまだはっきりしない身体は、耳や鼻だけがしっかり覚醒していた。
何やらスゲーいい匂い。花のように瑞々しくて、柔らかい。
イメージ的には松本みたいな可愛い女の子の部屋の匂いだ。
鼻の穴だけをヒクヒク動かして、そのいい香りに浸っていると、
「あ、気がついた」
と、低い声が聞こえた。
いい匂いと低い男の声が結びつかなくて、身体がびっくりしてしまったのか、俺は慌てて起き上がった。
「あれ、ここは……?」
全く見覚えのない光景に、まばたきを何度もしてみるが、どうやっても目の前の光景は変わらなかった。
広く整然としたリビング。白い壁。でっかいテレビにこげ茶色のリクライニングチェアー。そして、今まで俺が寝ていたであろう、リクライニングチェアーとお揃いの3人掛けのソファー。
俺の猫の額ほどのアパートよりも遥かに広くて綺麗な部屋に、訳がわからず辺りをグルリと見渡した、その刹那。
「うわぁっ、さっきの!!」
すぐ側にあの絶世の美女の顔があったので、思わず身体が浮くほど跳ね上がってしまった。
「何よ、そんな化け物を見るような顔しちゃって」
トゲのあるような言い方だったけど、その割に少しだけ笑っているようだ。
間近で見ても、やっぱり美人。そして、いい匂いの発信元もこの美女だったようで、思わず息を深く吸い込んだ。
「あんた、気絶してたのよ」
「え、何で……。俺、松本を助けに来たのに……」
「その“松本”にドライヤーを思いっきりぶつけられたのよ」
美女は、その時のことを思い出したのか、クスクス笑い出した。
その笑顔が屈託なくて、美人なのに可愛いって反則だろ、と彼女が笑っているのをボンヤリ眺めていると、ふと自分の今置かれている状況に気付き始めた。
俺は、こんな所で美女に見惚れている場合ではない!!