♥なかなか素敵な男♥-8
「痛いっての」
ヒロさんは舌打ちをして、天童さんを睨んで、その腕を振り払う。
少し乱された髪をかき上げてからようやくまともにあたしの目の前に立った所で、さっき感じた違和感の正体がわかったのだ。
この人、背がすごく高いのだ。
小野寺くんと談笑しているのを見た時、美男美女のやり取りに見惚れてて気付かなかったけれど、180センチ近くある小野寺くんと並んでいてもひけを取らなかった。
ヒロさんのあまりの美貌にばかり目が行って、彼女(いや、彼か)の身長の高さに気付かなかったのだ。
だけど、違和感だけは感じていてーー。
ヒロさんが男であるという衝撃的な事実に驚きながらも、腑に落ちた自分が、色素の薄いヒロさんの瞳の中に映り込んでいた。
うはー。近くで見てもホント綺麗……。
茶色の瞳。サラサラで柔らかそうな長い髪。そして、陶器のように白く滑らかな肌。
見惚れていると、その美しい顔がみるみる内に近付いてきた。
う、ちょっと、ちょっと!!
「……というわけで、私は性別上、男なんだけど、あんたの衣装担当になるから。文句ある?」
「い、いいえいいえっ、ございませんっ!!」
とは言うものの、心と身体が一致しない人は、小野寺くんがいるから偏見はないつもりだったけど、ヒロさんの場合は正直、複雑。
だって、そこらの女の子よりも遥かに美しい人があたしの衣装係なんて裏方、やってもいいんだろうか。
この人こそ、コンテストのモデルをやった方がいいんじゃ……。
「そう、よかった。それじゃ始めましょうか」
そんなあたしの思惑も知らず、傾城の美女(男だけど)は、ようやく鋭く睨んでいた表情を柔らかく崩すと、おもむろに指を鳴らし始めた。
「コンテストは気合入れていくからね、いい?」
「はあ……」
「じゃ、まずは採寸するから。今すぐ服脱いで」
「はあ!?」
「今すぐ」って、ここで、ですかー??