♥なかなか素敵な男♥-2
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「でね、さっきの続き」
結局あれからヘアスタイルやファッション、コスメなんかの女子が好きそうな話題のお喋りに花が咲き過ぎて、本題に移ったのは天童さんのアップルパイを食べ終えた後だった。
天童さんが渡してきたファイルをペラリとめくってみる。
それは随分使い込まれていて、中を開くとバラエティに富んだ女の子の写真や雑誌の切り抜きがたくさんファイリングされていた。
ショート、ボブ、ミディアム、ロング……いろんな顔した女の子がその中に存在していて、その誰もがキラキラ可愛く美しく写っている。
それを、空腹が満たされてぼんやりした頭で眺めていると、突如ゴツい人差し指がちょうど開いていたページを指差した。
「コンテストは、こんな感じでいこうと思ってるの」
途端、ハッと目を覚ましたみたいに我に返ったあたしは、
「えっ、コレ……ですか!?」
と、素っ頓狂な声を出した。
満腹と深夜のせいで眠くなっていた頭の中が、一気に覚醒する。
それほどに、天童さんのチョイスしたヘアスタイルは、今のあたしのそれとはかけ離れていたのだ。
「そう、これ。あなたは顔も小さいし、頭の形も綺麗みたいだから、絶対似合うわよ」
「でも……あたし、これは……」
「里穂ちゃん、大丈夫! 天童さんを信じて!」
天童さんと鏡越しで会話をしていると、鏡の端から小野寺くんが現れて力強く頷いた。
深夜だと言うのに、くたびれた様子もない綺麗な顔の小野寺くんは、いつもここでカットしてもらうと言ってたことがあったっけ。
そんな彼のヘアスタイルは、いたってシンプルなショートヘアなんだけど、少し猫っ毛でクセのある髪質と、耳の下から顎にかけてのラインがすごく綺麗なのを活かしていて、ただでさえ綺麗な顔した小野寺くんをさらにオシャレに、それでいてキュートに仕上げている。