届きかけた届かない想い-8
(何であの時の夢を・・・・)
圭は奈緒に起こされた時、奈緒との初体験の時の夢をみていた・・・・姉貴と奈緒の事を呼ぶ事で奈緒への気持ちにけじめをつけて封印しようとした・・・・しかし出来なかった・・・・
(マズったなぁ・・・・)
圭は頭からシャワーを浴び続けた・・・・
寝惚けた圭に抱きつかれた時、奈緒は思わず圭を抱き締めようとしてしまった・・・・しかし、寸前になんとか理性を取り戻し圭を押し退けキツイ言葉を投げ掛けた。圭が浴室に入ったのを確認して、奈緒は大きなため息をついた・・・・
(あんな事をしなければよかったのかなぁ・・・・)
圭と結ばれた事を後悔してはいない・・・・しかし、圭が自分への想いをつのさせる結果となってしまったのなら間違った事だとも言えた・・・・あの時、奈緒は自分の想いにけじめをつけて封印するために圭と結ばれた・・・・結婚相手を愛していくために・・・・バカな事を考えていたと思う人もいるだろうが、奈緒は間違っていたとは思っていなかった・・・・実際、結婚式で愛を誓った時は、これからは彼を愛し、彼に尽くそうと本気で思っていた・・・・ただ、女として一番愛している人の子供は欲しかった・・・・だから危険日にもかかわらず中で出される事を望んだのだ・・・・その次の日からは彼に抱かれやがて子供を産む事になるだろう・・・・その事は自分で決めた事なのだから後悔はなかった・・・・しかし、圭の独り言を聞いてしまった時、女としての本音が出て来てしまい圭と結ばれた・・・・圭と彼は同じ血液型・・・・DNAの検査をしなければわからない・・・・そう悪魔が奈緒の耳元で囁き・・・・奈緒は悪魔の囁きに乗ってしまった・・・・幸か不幸か圭の子供を身籠る事はなかったが・・・・
(あんな事がなかったら圭への想いを封印出来たかもしれないのに・・・・)
奈緒は涙を拭った。
「圭?どうしたの?もしかしてまた眠ってしまった?」
奈緒は浴室にいる圭に声をかけた。
「あっ!大丈夫!今、出るよ!」
「私はさっき浴びたからゆっくりしててもいいわよ!」
奈緒はそう声をかけて、喪服に着替え始めた。圭が浴室から出ると喪服に着替えていた奈緒は下着姿だった。
「ゴ、ゴメン!」
圭は慌てて奈緒に背中を向けた。
「何をしてるの?早く着替えなさい。遅れるわよ!」
奈緒は圭を笑顔で話しかけた。
「う、うん・・・・」
「おかしな圭ね?姉弟なんだから別に平気でしょ?裸を見られてるわけでもないのに・・・・」
奈緒は可笑しそうに笑っていた。
「そ、そうだね・・・・」
圭には振り替える勇気などなく奈緒に背中を向けたままで自分の荷物があるところまで移動して行った。
「可笑しな圭ね?」
奈緒は圭を見ながらニコニコ笑っていた。
通夜が終わり、隣のベッドで寝息をたてている奈緒を見ながら
「もう・・・・お姉ちゃんにとって俺は弟でしかないんだよな・・・・)
この日は、金曜日であったが天皇誕生日で祝日、そして明日、明後日は土日で休みだったので、葬式の後すぐに帰らずもう一晩泊まって日曜日に帰る事になっていた。
(もう一晩こんな状態ですごさないといけないのかよ・・・・)
圭はそっとベッドを抜け出してトイレでヌク事にした。
トイレで一発ヌイてから
(これじゃ蛇の生殺しだよな・・・・でも・・・・お姉ちゃんの幸せな家庭を壊す事はしたくないし・・・・)
圭は何度もため息をついた。
圭が望むなら再び抱かれてもいいと思っていた奈緒は、圭が寝返りを打つ度に高まる胸の鼓動を押さえるのがやっとだった・・・・圭を禁断の道へ招き入れた奈緒には、圭がその世界から抜け出そうとしているなら再び引きずり込むような真似だけはしたくなかったのだ・・・・しかし圭が望んでくれるならそのまま関係を人知れず続けてもいいとも思い始めてもいた・・・・例え地獄に落ちようと・・・・
(卑怯者だな私は・・・・判断を全て圭に委ねて自分の罪を軽くしようとしている・・・・)
互いの幸せを願い家族でいようとする心と・・・・互いに愛し合う一人の男と女として生きていきたいと願う心・・・・その二つの間を微妙なバランスを取って揺り動くヤジロベエはどっちに転んでも不思議ではなかった・・・・