届きかけた届かない想い-7
圭が奈緒の顔を見上げると奈緒は優しい眼差しで圭を見つめていた。
「圭・・・・もういいわよ・・・・さっきの続きしましょうか?」
「う〜ん・・・・したいのはやまやまだけど我慢するよ・・・・」
「今夜だけは我慢しなくてもいいのよ!」
「今、続きを始めちゃうと・・・・お姉ちゃんの事諦められなくて・・・・ウエディングドレス姿のお姉ちゃんを式場から拐ってしまいたくなるから・・・・」
「まぁ圭ったら・・・・」
奈緒は嬉しそうに笑うと
「そんな事が出来れば本当に幸せなんだけどな・・・・」
口の中で呟いた。
「えっ?何か言った?」
「圭が大好きって言ったのよ!それより本当に続きをしなくてもいいの?ここ・・・まだ元気だよ?」
奈緒は軽くぺニスを握った。
「いいんだよ!その代わり朝までお姉ちゃんとこうさせていてくれる?お姉ちゃんと肌で触れ合っていられるだけで幸せなんだ・・・・」
「いいわよ・・・・」
奈緒が圭の頭を抱き寄せると圭は奈緒の胸に頭を預けた・・・・
圭は朝まで眠らずにこうしていたかったが、奈緒の心臓の鼓動が子守唄代わりになりすぐに眠りに落ちた・・・・朝、目が覚めると奈緒の姿はなかった・・・・シーツに残された破瓜の証が夢でなかった事を物語っていた・・・・
圭がリビングに顔を出すと、奈緒と父が話をしていた。圭に気づいた奈緒が
「おはよう!圭!いい夢見られた?」
いつもの笑顔で話しかけた。
「うん!姉貴は?」
「とぉっても幸せな夢を見られたよ!」
「もしかして・・・義兄さんとの夢?」
「ひ・み・つ!」
そう言って笑った。
「あれっ?圭はいつから奈緒の事を姉貴って呼ぶようになったんだ?」
「そういえばいつからだっけ?」
「俺も覚えてないや・・・・」
「圭も大人になったんだな・・・・この前まで奈緒の側でお姉ちゃん!お姉ちゃん!って甘えていたのに・・・・」
「父さん!何時の話をしてるんだよ!」
「俺にとってはつい昨日の事なんだけどな・・・・もう奈緒も嫁に行ってしまう歳になっていたんだな・・・・」
父がしんみりとした表情で奈緒を見つめた。
「ちょっと!お父さんやめてよね!お父さんにそんな顔をされると・・・・」
奈緒は少し泣きそうになっていた。
「ゴメン、ゴメン、そうだな・・・今日はめでたい日だもんな!」
奈緒は泣いているのを誤魔化すために
「圭!ご飯の準備は出来ているから歯を磨いて顔を洗って来なさい!」
そう言ってリビングから出で行こうとした。
「姉貴?何処へ行くんだ?」
「ちょっと洗濯をしてくるわ!」
「何も結婚式の当日にそんな事をしなくても・・・・」
「五月蝿い!」
奈緒はそう言って出て行った。不思議そうな顔をする圭の肩に手をおいた父が
「泣いているのを見られたくないんだよ・・・・」
圭は父の顔を見て頷いた。
(今までありがとう・・・・そして・・・・サヨナラお姉ちゃん・・・・幸せになってね・・・・)
圭は心の中で奈緒に別れを告げた・・・・・
奈緒の結婚式のあいだ、圭は泣きそうになるのを必死に堪えていた。
式が終わり家に帰ってから、もうこの家に奈緒はいないって事を思い知らされ、大声で泣き崩れた・・・・