欲情-1
「あ、起きた?」
「…お母さん。」
自分の部屋のベッドで眠っていたようだ。母が心配そうに私を見下ろしている。
「そういう年頃だからね、するなとは言わないけど。気を失うほど、っていうのはあまりよくないと思うよ。」
「え、何が?」
母は視線で私の下半身を指し示した。
「あ!」
パジャマ代わりのスウェットが膝あたりまでズリ降ろされ、お尻から回した手の指先がパンティに入っていた。
顔がカーっと熱くなり、慌ててスウェットを引き上げた。
「繰り返しになるけど、するのはいいの。お母さんだって…あ、それは置いといて。バレないようにしようね、親に。お布団被っておくとか。お母さんはそうしてるよ…あ、それは関係ないんだけど。」
母もだいぶ混乱しているようだ。
「じゃあね、お休みなさい。」
…。
自分の娘がしてるのを目撃してしまった母親って、どんな気分なんだろう。まあ、していたわけではないけど。状況だけ見ればしてたと思うのが自然だろう。
それにしても。予想通り戻ってこれた。行きも帰りも天井にひっくり返されればいいんだ。そう思えば、もしまたあっちに行っても一回目ほどには慌てずに落ち着いていられるかもしれない。
いやまてよ、もしかして夢オチ?だったらスウェットがズリ降ろされ、パンティに指が入っていた理由が分からない。ウワサに聞く淫夢だとしても、夢で見た通りに具体的な行動をするだろうか。走る夢で走ったり、レースに出てる夢見て運転したり。夢って、そういう事しないでしょ?
確かめてみよう。本当に胸を弄り回されて快感に悶えさせられたのかを。
机の引き出しから手鏡を取ってきてもう一度ベッドに座った。スウェットを完全に脱ぎ、膝を立てて足を大きく開いた。
「ああ、やっぱりか。」
パンティの布が湿って透明感を増し、中が透けている。
左手の手鏡にその部分を映しながら、右手の指をパンティに引っ掛け、横に捲った。何の抵抗感もなく、あっさり捲ることが出来た。
「…。」
中はスゴイことになっていた。粘り気の強い液体がそのあたり全体にニチャーっと広がり絡みつき、糸を引いている。
「うわあ…。」
その状況を見ているうちに、私は強い疼きを感じ始めた。
「ねえ、言い忘れたんだけど。」
お母さんが戻ってきた。
「…。」
「…。」
「ごめん。」
「あ、ううん、私の方こそ。せっかくアドバイスもらったのに。」
「まあ、若いからねえ…。邪魔してごめんね。」
「う、うん、ありがとう。」
母は部屋を出ていった。
「ふぅ。まいったな。二回ともしてなかったんだけどな。してたも同然だけど。」
私の意識が下腹部に集中した。
「してない…んだけどな。」
もう一度手鏡でそこを見た。
「ふとん…。」
私は仰向けに横になり、ふとんを被った。後はもう止まらない。パンティを足首まで引き摺り下ろして左足だけ抜き取った。少し膝を曲げた状態で両足をV字型に大きく開き、両方の手のひらを太腿の内側に這わせた。根元に向かって。たどり着いたその部分を左手の指で開きながら右手の指でゆっくりゆっくり弄った。
「うう、あはぁ…。」
思わず声が出た。
「おっとっと。」
さすがに三回連続は怒られるだろ。
私は叫びそうになるほどの快感に必死に耐え、声を殺して自分で自分を愛撫し続けた。その抑圧された状況のせいだろうか、私の情欲は猛烈に高まり、気が付けば、これでもかとばかりに乱暴に擦り回していた。そこを開いている左手にも力がこもり、引き千切らんばかりだ。
嵐のような快感が下腹部にジンジンジュワーっと湧き上がり、染み渡り、いつの間にかくねらせていた腰全体が痺れてきた。
「ん、んん…。」
のどが苦しい。声を抑え込むのにも限界がある。
「あはぁあっ!くぅううう…。」
ついに漏らしてしまった声と共に私はその時を迎えた。
ドアが少し開いたような気がした。でも誰も入って来なかった。
「お母さん…ありがとう。」
でも、もし誰かが部屋に入って来たとしても何も出来なかっただろう。
とてつもない快楽の大波。強く、深く、長く。下半身から満ち溢れ、泡のようにブチブチと弾けて広がる快感に、私は縛り上げられたかのように硬直し、微かに震え、体を動かすことなど不可能だったのだから。