♠ピンチの女♠-9
駿河さんは、真剣な顔のままさらに続ける。
「いいか、決して無茶はするな。いざとなったら警察を呼べよ。相手は一人じゃない……んだろ?」
微妙に言い淀んだ口調だったのは、おそらくそこには小野寺くんがいるからだろう。
小野寺くんもまた、直接駿河さんと一緒に働いた事はないけれど、古川さんを通して可愛がってもらってる関係だから。
そしてそんな小野寺くんを敵認定とするのは、きっと駿河さんにとっても胸が痛いのだと思う。
そんな駿河さんを見てると、目頭がツンと熱くなる。
古川さんが駿河さんのことをノロケる時は、「クールに見えるけど、ちょっとおバカな所がある」なんて笑うけど、俺にとっちゃやっぱり頼れる大人な男だ。
しかも、ほとんど接点のない俺に大金をポンと貸してくれるし……。
うう、この人カッコよすぎるぜっ!!
感激のあまり、駿河さんの姿が涙で滲んで見える。
「さ、早く通りに出てタクシー捕まえに行くぞ……ん?」
「駿河さん……」
そして、俺はゆらりと彼の目の前に対峙する。
「あ、天野?」
「駿河さぁんっ!!」
「うわーっ!!!」
深夜の静まり返った街に、俺に抱きつかれた駿河さんの悲鳴が鳴り響いたのであった。