♠ピンチの女♠-7
全く、今はなんて便利な世の中なんだろう。
知りたいと思った情報は、キーワードを少し入れるだけであっという間に見つけられるのだから。
しかも相手は超有名な美容室の店長だ。
店のHPはもちろん、インスタやツイッターだけじゃなく、美容室“blue tears”に関する某掲示板のスレッドまであったのだ。
俺は、その内の一つ、某掲示板に注目したのである。
本人発信のものは、自分に不利なことは載せないはず。
ならば第三者からの声が聞けるそのスレッドなら、あの男の真実の姿が見えてくると判断したのだ。
「えー、何々……『blue tearsの天童吾郎は、気に入った女性客を次々食いまくってる』だと?」
「あ、こっちは『blue tearsの天童の手口はカットモデルを口実に深夜の店に呼び出す。ヤルだけヤッたらあとはポイ捨て』だって……」
二人は、顔をくっつけて俺のスマホを凝視していく内に難しい顔になっていき、無言になって行く。
ようやくこの鬼気迫る状況が伝わったのか、二人のこめかみには小さく汗が滲んでいた。
要はそのスレッドは、お店としての情報や美容師の腕のことを語らう場ではなく、“blue tears”の天童吾郎がいかに女癖が悪くて、女を取っ替え引っ替えの挙句にポイ捨てしてしまうひどい男かを罵る場になっていたのだ。
「翔平、これ……里穂ちゃん危ないんじゃ……」
「ああ……」
言葉を失っていた二人がようやく発した声は、かなり震えていた。
時折レンタル店の自動ドアが開いては、中から楽しげな音楽が耳に届いてくるけれど、俺達のどんよりした空気の前には、何ら意味のないものだった。