♠ピンチの女♠-6
俺達が今いるのは、スウィングのそばにあるショッピングモールの一角だ。
もちろんこんな時間だから店は閉まっているんだけど、全国チェーンの大型レンタル店だけは営業時間が深夜なので、ここだけは入店できる。
俺の話が長引きそうだったので、みんなでこのレンタル店の前にあるベンチのとこに移動してきたってわけなのだ。
「それより、天野くんはこれからどうするの?」
駿河さんの隣に座った古川さんが、心配そうに俺を見た。
「どうしたらいいんすかね……。当の松本はあの通り、小野寺くんを信用しきってるし……」
深いため息を吐く俺に、古川さんは言いづらそうに視線をあちこち動かしてから、ゆっくり口を開いた。
「うん……、天野くんの言ってることは嘘じゃないってわかるんだけど、それでも、あたしも信じられないんだよね……。小野寺くんがホントに里穂ちゃんをその男の人に差し出そうとしてるなんて……。やっぱり、純粋にコンテストのモデルの練習に行ったんじゃ……」
「でも、俺はこの耳で確かに聞いたんですよっ! 小野寺くんがあの男に、松本のことを『好きにしていい』って言ってたのを!」
あれは絶対、“髪”を好きにしていいっていう意味じゃなかった。
小野寺くんは、松本を『いい身体してる』って言ったんだ。
美容室のコンテストのモデルなら、髪さえあればそれでいいはずであって、身体は関係ない。
それを、あんな言い方するってことは、あの男の目的な一つに決まってる!
「それに、確信できる証拠もさっき見つけたんです」
俺はデニムの尻ポケットからスマホを取り出すと、未だ半信半疑の二人の前にそれを突き出した。
「何だよ、これ」
「……いいから見てください」
俺に促された二人は、言われるがままにスマホに視線を移した。