ン-6
金曜日の、あれはいったい現実だったのか?
土曜日に目を覚ますと、安達さんはすでにスーツ姿で。
「悪い。昨日のバグを午前中に直したいから会社に行くけど。
美鈴は、ゆっくりしてっていいから。
帰り道は分かるかな?」
「・・・たぶん」
「本当に悪い。鍵は下のポストに入れて行って」
そう言いながら、寝起きの私の頬にキスをして出社して行った。
えっと。
裸でベッドに寝ている私は、きっと昨日の事は夢じゃなくて
隣が微妙にへこんでいるベッドは
安達さんがさっきまで寝ていた証拠で
やっぱり夢じゃない、よね?
昨日、タイムカード代わりの電子認証をして会社を出てから
いつもの居酒屋に行って。
それから起こったことが、あまりにもハイスピードで
どうも現実には思えなかった。
考えながら家に帰り、週末は色々思い出したけど
何度考えても、現実なんだか夢なんだか・・・
システムの安達さんと私が?
ないないないない。
あの大人でカッコいい人が
新人でよれよれの私なんか相手にするはずない。
安達さんが私をからかったんだ。
そうだ。オフィスラブしたいなんて騒いでいたから
ちょっとからかってみただけだ。
うん。そうだ。
日曜日、1日中金曜日のことを考えて
安達さんは私をからかっただけだと結論付けた。
明日からの1週間も、またこき使われるだろうから早く寝よう。
そう思って日曜日は早めに就寝した。