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二つの愛に包まれて…。
【悲恋 恋愛小説】

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二つの愛に包まれて…。-1

久美子お前は幸せに暮らしているだろうか…。
結婚し子宝に恵まれ、大人へと育てて…。
あれから二人で数えた星空を見ながらいつもそう思っていた。

あれから50年、今は立派な子供と孫に囲まれて楽しく暮らしてて欲しい。そう願っていた。

俺はあれからすべてをリセットし、人生をやり直す為に歯を食いしばって頑張り、人並みの人生を過ごせた。

お前との出逢いはナンパだったよな。田舎のイモ姉ちゃんが都会の会社に就職して一人暮らし。ほっぺが真っ赤で田舎丸出しだったけど、一目見て磨けば輝くって見抜いた俺。

お前は俺を警戒し逃げる様に立ち去り、俺がしつこく追い掛けると目の前でこけたお前。

足から血を流し、痛そうに泣くお前をお詫びにおんぶして家まで送り、そこで初めて話をしたよな。

「あ…有難う。」

「こっちこそ、しつこく追い掛けてごめんな。ちゃんと消毒しろよ。」

「は…はい。」

そんな会話だったよな。

数日後、俺達の運命だったのか街中で偶然に会ってしまった。

「お〜い!イモ姉ちゃん!足大丈夫か?」

「あっ!この前の方…!はい!先日は有難うございました。もう大丈夫です。」

お前はそう笑顔で答えてくれた。

「悪いのは俺や。飯奢るわ!」

「そんな!私にお礼させて下さい。」

そんな感じで俺の行きつけの定食屋で二人で飯食ったよな。お前ご飯おかわりまでして。

お互いの事や家族の事や仕事の事田舎の話し、久しぶりに笑った。

そんなお前の処女を奪うまでにそんなに日にちは掛からなかった。

痛みをこらえながらもしっかりと俺に掴まり、貫通した時に涙を流しながら唇を重ねてきたお前。

「愛してる」と二人交わしたあの夜の事は今でも忘れらない。

お前のアパートに転がりこみ自然と同棲生活が始まり、俺は毎日毎日お前を求め、お前も女の喜びを知りいい女になっていったよな。

二人で買い物に行ったり、夜の公園でベンチに座り、肩を寄せ合い星空の星を数えたよな。

「私の田舎でも同じ星空見れるのよね。」

「そやな、成人式終わったら一緒に見に行こうな!」

二人で交わした未来の約束。幸せだった、本当に幸せだった。あの日までは…。

あの日、会社で上司とトラブルになり、思わず手を挙げ上司に怪我を負わせた俺。

「馬鹿…。明の馬鹿…。」

警察署まで迎えに来たお前は大粒の涙を流し泣き伏せ、俺の親父に抱き合えられた。

何とか示談で済ませて貰ったが俺は職は失った。あの時、お前とのこれからの事をしっかりと考えて辛抱していればと本当に後悔した。

それから職探しをしたがなかなか就職先が見つからず、ストレスが溜まりお前に八つ当たりする様になった俺。

仕事から帰ったばかりのお前の服を剥ぎ取り、レイプまがいに犯す俺。

「ダメ…!今日は危ないよ…!お願い…!つけて…!あぁぁぁぁぁ…!」

欲望を吐き出す為の俺にはそんな言葉は耳に入らなかった。

俺は仕事が見つからず朝から酒を飲み、お前が毎日置いていく金でギャンブルに溺れ、女を家に連れ込み遣りまくる荒んだ生活が続いた。

当然の事ながら貯金も無くなり、お前一人の稼ぎでも追いつかなくなり、俺はサラ金に手を出し借金を膨らませた。

督促状で借金を知ったお前は、俺の知らない内に親に借金を繰り返し返済に宛てていた。

「仕事早く見つかるといいね。頑張って。」

そんな俺にお前は文句も言わずいつも笑顔で優しくしてくれた。

更に夜はスナックでバイトをし、生活費に宛て、身を粉にして働き続けた。

そんな生活が長続きする訳なく、三ヶ月後お前は会社で倒れ救急車で病院に搬送された。

極度の過労と流産による大量出血、意識不明の重体だった。

それを知ったのは女と遣りまくって深夜に家に帰ってからだった。

「明さんですよね。姉が…。姉が…。」

家の前にはお前の一つ歳下の弟の信一が俺の帰りを待っていた。

会社の上司がお前の家族に連絡し、両親と弟が搬送された病院に向かい、お前から俺達の事を聞いていた弟が俺に知らせてくれた。

病院に着くとお前は危ない状況で、医師からはそれなりの覚悟をと言われていた。

「貴様ー!久美子に何をしたー!お前のせいで久美子は…!」

お前の父親は俺の胸ぐらを掴み大声を上げた。当然だと思った。

「父さん、姉ちゃんがこんな時に!ここは病院だよ!」

信一は俺達の間に入り父親をなだめた。

俺は返す言葉もなく待合室のソファーに座り込んだ。

母親の泣く声に俺の涙も止まらなかった。
そして泣いた涙が枯れるまで泣いた。

二日後、集中治療室のドアが開き、看護婦が慌てて出て来た。

『まさか…!久美子が…!』

誰もが最悪の事態を考えたその時だった。

「明さんいらっしゃいますか?意識が戻りました。明さんを呼んで欲しいと…。」

その声に両親も信一も泣きながら喜び、その姿に俺は泣き崩れた。

「明さん、姉ちゃんの側に居てやって下さい。」

信一は俺を抱き起こし集中治療室に入った。

「ご…ごめんね…。明…ごめんね…。でも…すぐに元気になるからね…。待っててよ。約束よ…。明…。側に居て…。」

お前は俺の手を力強く握りしめ、泣きながらそう言うと、後ろからは両親と信一の啜り泣く声が聞こえた。

「何とか峠は越えました。ただ肝機能が著しく低下しています。血液検査の結果も思わしくありません。流産の後遺症も懸念されます。半年くらいの長期療養が必要です。地元の病院の紹介状書きますので。」

「よ…よろしくお願いします…。」

医師からの言葉に母親は泣き崩れ、父親は頭を深く下げた。



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