セ-2
「え・・・?」
「このまま化粧室に行って・・・座敷に戻ったらカバンを持って外に出ろ」
「でもお金っ」
「そんなの、男といる時にオンナは気にするな」
ニヤッと笑って「永田!」
と、経理の永田さんを呼んだ。
私がトイレから座敷に戻ると、すでに安達さんはお店を出た後で
「ごめん。疲れたから帰るね」
と、私もお店を後にした。
急展開にドキドキする暇もなくて
10分前の自分からかけ離れた状況に、ほろ酔いの頭は付いて行かない。
いくら忙しくても、同期の間でカッコいいと噂になっている安達さんの存在は
私でも知ってて。
その安達さんと話したばかりか
一緒にお店を抜けようとしているなんて
何この展開!
合コンなんてどーでも良いぐらいの展開なんですけどっ!
お店を出ると少し離れたところで、
安達さんが電話をかけていた。
そのままそっと傍によると
「その案件、明日休出して確認するよ。メモを残しておいて。
バグはそのままにして置いていい。俺が処理する」
まだ・・・システムは残っている人がいるんだ。
スーツを着こなして、仕事の電話をしながら
私を見て微笑む男は
今まで学生の恋しか経験のない私にとって
初めての「大人の男」だ。
「分かった。お疲れさん」
そう言いながら、近づいた私の髪をクシャッとする。
もうっ!
私はムッとして両手で髪を直す。