第一章 痛いのに指が-1
目覚めるとそこは知らない部屋だった。ふかふかで気持ちのいいベッドで横になっている。大きな窓からは柔らかい光が射し込み、上品なカーテンが左右に束ねられていた。
家を出たときのままの制服を着ている。どこかで事故にでも遭って、病院に運ばれてきたのだろうか。しかし、優しいベージュで統一された室内を見回しても医療機器らしき物は見あたらないし、病室にしてはずいぶん広い。
ここはどこだろう。朦朧とした意識で考えてみたが、全く思い出せない。上体を起こし、ベッドの端に座った。床にスリッパが揃えて置いてある。足を入れて立ち上がると、ズキン、っと頭が痛んだ。体を確認したが、特にケガはしていないようだ。
私の身にいったい何が起こったのだろう。