第一章 痛いのに指が-2
授業中は居眠りしたりスマホでおしゃべりしたりでやり過ごし、体育は汗をかくのがイヤなので極力体を動かさないようにさぼった。
憧れのあの人と偶然を装ってすれ違えないかと、用もない中庭をしばし徘徊してから約束の校門前に向かった。
「ヒロカちゃん、お待たせ。」
「ううん、待ってないよ…なんて言うと思った?コイツめ。」
「はは、いつもながらにキビシイねえ、ごめーん。」
「いいよ、また中庭でしょ。」
「うん…。」
「その様子だと、今日は会えなかったか。」
「へへ。」
「まあ、頑張りたまえ。私の先を越さない程度に。」
「それはどうかなー。」
「なんだとー!三カ月だけ年上だからって、調子のるなよー。」
などと。いつものように騒ぎながら帰路についた。
「ね、行くでしょ?」
「もちろん!」
私たちにはお気に入りの店がある。通学路から一本裏道に入った所にある雑貨店だ。可愛いグッズ満載だし、商品の入れ替えも早くて、何回行っても飽きない。でも、そこにいく目的は他にもあった。
私だって年頃の女の子なのだから、当然ながらエッチな事に興味がある。でも、スマホやパソコンはお父さんがロックをかけていてそういうサイトには行けないし、コンビニで立ち読みなんて不可能。通販もすぐバレるだろう。
そんな私に救いを与えてくれたのがこの店だ。入り口付近は女子向け感全開なのだが、複雑にレイアウトされた店内を一番奥まで行くと…。
「き、今日もスゴいの入ってるなあ。」
「うん…。」
「うわあ、これなんかどうよ。」
「ヒロカちゃん、そういうの好きよね。」
「そういう君はこんなのだろ?」
「そ、そうね。何というか…ちょっとヘンな感じになってきちゃったかも。」
二人は無言モードに入って生命の神秘を探訪し続けた。
「へえ、ここにこういうふうにすると感じるんだ。今度やってみよう。」
「やる、って?」
「自分でに決まってるじゃない。相手なんか居ないんだからさあ。君もしてるでしょ。」
「あ、えーっと…。」
「なになにぃ?処女ぶってるんじゃないわよ。」
「いや、処女なんだけど。」
「…。」
「…。」
「ですよねー。あーあ、早く男の子としたいなあ。」
「ヒロカちゃんってば、いつも積極的よね。でも、なんだか怖くない?」
「まあ、正直そうだね。痛いって言うしさ。相手も初めてだとムチャクチャな事してくるかもしれないからねえ。」
「やっぱり年上がいいのかなあ。」
「少なくとも初エッチに限ってはそうかもね。それとも、私なんかどう?優しくしてやるぞー!」
「えー、やだよ。男の子とするものでしょ?」
「だよね…。」
無言モード再突入。
「あ、私トイレ行く。ヘンなことするんじゃないからね。ないからね、しないからね。」
「分かってるよ。行ってらっしゃい。」
ヒロカちゃんはなんだかぎこちない歩き方でトイレの方へ歩いていった。
一緒に居てくれると落ち着いていられるんだけど、一人っきりでこんな所に居るのを誰かに見られたら、っと思うと、急に心細くなってきた。早く帰ってきてくれないかなあ。
その時、急に後ろから声をかけられた。
「お探しの物は見つかりましたか。」
飛び上がるくらいビックリして振り返ったあたりから記憶が途切れている。