♠狙われた女♠-11
「そうかなぁ……」
「そうだよ、何で急に俺に対する扱いか酷くなるわけ?」
普通振った相手には、気まずさもあってよそよそしくなるか、無理していつも通りに振る舞うかというパターンになるだろうに。
「あー、そういえば何でだろう」
松本はその小さな顎に人差し指をあてて(悔しいが、それがまた可愛いんだ)しばらく考えていたようだったが、やがてその答えがわかったのか、手をパンと叩いて目を輝かせながらこちらを向いた。
「わかった! 気を使う必要がなくなったからよ」
「……はあ?」
「だって、ここで変な気を使って今まで通り優しくしたって、天野くんは“今までの”あたしを好きだったわけだから忘れられるわけがないじゃない? だから、ここは心を鬼にして天野くんにヒドい態度取ってたんだと思う」
「ふっ、ふっ、ふざけんな!! 忘れられるわけがない、だあ? いつまでも自惚れてんじゃねー! こっちは告白したことが黒歴史になっちまって、一刻も早く忘れ去りたいってのに!」
そうだ、すべての元凶は俺が松本の上辺だけに騙されて告ってしまったことにある。
あんなヒドイ振られ方をするなら、ハナっから告ってなかったさ。
それに性悪な所を今更出して、俺に諦めさせようとしているのかもしれねえが、本性知った所で、俺の中の松本という存在が勝手に出て行ってくれるはずもない。
ムカつくってわかっていても、頭の中はテメーの事ばかり考えちまうんだよ!!
ジロリと睨んでやっても、この女は臆することなくケラケラ笑うだけ。
……ちくしょう、俺を下に見やがって。
「テメー、俺が告ったからってあんま調子こいてんじゃねーぞ? そりゃ、あん時は好きだったけど……今はオメーのことなんてどうでもいいんだよ! だから、あんまり舐めた態度取ってると、殺す……いや、犯すぞ!?」
松本の眉間の辺りに指差して、そう凄んでやったら、彼女はキョトンと目を丸くした。