惜別の時-1
どれぐらい経ったかわからない中でふと目が覚めると、男達は全員服を着ていた。
「奥さん、いい体験しましたね。また連絡下さいよ。」
そう言うと、私の前に名刺を置き、初めに案内してくれた女性以外は部屋を出て行った。
「さあ、シャワーを浴びて帰ってもらって結構ですよ。」
事務的に言われ、日常に引き戻された。慌ててシャワーをして軽く化粧をして、部屋を出る頃には15時半になっていた。女性にアフターピルらしきものとギャラの入った封筒を渡され、ホテルを後にした。帰りの電車で恐る恐るラインを開くと弘樹クンから何度もメッセージが入っていた。
【本当にごめんなさい。急に怖くなって…。ごめんなさい。】
涙が溢れた。まだ何も成していないのに惜別の涙が溢れる。もう今日の朝までの自分じゃ無い事は十分にわかっていたし、戻れないであろうことも、今もなお残る体の疼きが教えてくれていた。帰宅して時計を見ると、まだ娘の学童のお迎えまでには余裕があった。慌ててバスルームに駆け込んで服と下着を脱いで洗濯機を回す。アソコからは精子の残液が出てきて異臭を放っていたが、手に取って嗅ぐとモワっとした淫靡な空気が体を包み、さっきの奴隷になり下がった自分を思い出しながら、指で膣内を掻き混ぜ、バスルームにひざまずいて果てるのだった。
翌朝、弘樹クンを見かけたが、一礼だけしてすぐに立ち去った。何かに目覚めた私はもう彼に魅力を感じていなかった。そして昨日もらった名刺を見つめながら、これから始まるであろう更なる未知の快楽探求に心を躍らさずにはいられないのだった。