序章-1
家政婦を雇う為に訪れた会社はキャッスル通りに面したビルの4階だった。受付を済ますと奥の部屋に通され、立派な髭を蓄えた紳士が挨拶に訪れて来た。
「わたくしが責任者です。何か問題があれば何でも言って下さい」
握手を交わして紳士を見送り、目の前に広げられた家政婦のカタログを眺めて時間を潰していた。カタログには数十人の家政婦の写真とその家族構成が英語で書かれていた。予め家政婦を指定していた僕は、対面を済ませて問題なければ、そのまま家に連れていくことを告げていた。扉をノックする音と共に、紳士と共に女性が現れていた。
「キャサリンです。あとは二人で話し合って下さい」
そう告げて責任者は部屋から出て行き、キャサリンはぎこちない日本語で挨拶を済ませて戸惑うように辺りを見渡していた。
「キャサリン、君は幾つになるんだい?」
「21よ」
「今まで何をして来たんだい?」
「家政婦よ。16歳から家政婦」
「僕で何人目になるんだい?」
「3人目。でも一人暮らしの家政婦は初めてよ」
頷いた僕は、キャサリンに後ろを向くように指示を出していた。キャサリンの紹介書には身長169、体重51キロ、子供なし、家族なし、ポーランド夫妻で家政婦を3年、カナダ人の老夫婦で2年と記載されていた。経歴書と本人を見比べた僕は間違いない内容に満足して責任者を呼んでくるようにキャサリンに伝えてあげていた。
キャリーバックを引くキャサリンと共に戻った責任者は、暫く世話になりなさいとキャサリンに伝えて僕に握手を求めていた。責任者は僕の手を強く握ってマネと露骨に請求を求めていた。強く握り返した僕は分厚い封筒を責任者に渡して、まずは半年分だと伝え多額のチップをその場で数える責任者を微笑ませて強烈なハグを受け入れてあげていた。さっさとその場を後にしたい僕は、また半年後に連れてくると伝え、キャサリンと共に車に乗り込んで家を目指していた。
「キャサリン、助手席でいんだよ」
反射的に後部座席に乗ろうとドアを開けたキャサリンを促し、キャリーバックをトランクに仕舞って運転席に戻りエンジンを掛けていた。隣のキャサリンは当然シートベルトをすることなく、助手席初めてよと嬉しそうに景色を眺めていた。ベルトを締めるよう伝えたが、使い方か分からないキャサリンは戸惑うように僕を見上げていた。手を伸ばしてベルトを引いた腕に大きな胸があたったが何の反応も無くキャサリンはベルトの締め方を見ているようだった。
「分かったわ。もう大丈夫」
何が分かったのかどうでもよかったが、ベルトに挟まれて露骨になったデカイ胸に僕の目は釘付けになってしまっていた。
「キャサリン、着替えを買ってから行こう」
「着替え?」
「そうだ、洋服を買ってあげるって言ってるんだ」
「嬉しい!優しい人ですあなた」
隣ではしゃぐキャサリンの身体に見合う下着とドレスを買うために、ショッピングモールに向かって揺れる胸をちらちら見つめながら、これから始まるキャサリンとの暮らしに興奮を抑えることができなくなってしまっていた。